一体、誰が―。兵庫県丹波市氷上町横田交差点角にある倉庫の軒先に突然、葉の形状から特産の丹波黒大豆とみられる鉢植えが5つ置かれ、所有者が困惑している。時期外れのお裾分けか、それとも不法投棄か。あるいは誤配達、まさかの落とし物。「誰かの物なのか、私がもらったものなのか判断がつかない。秋まで育て、私が食べていいのかどうかも分からない」と、もやもやした気持ちを抱えながら、枯らさないよう水やりなどの世話を続けている。
丹波地域では、トマトやキュウリなどが採れる夏場や、黒枝豆の収穫時期の10月に、知人や近所の栽培者からの「お裾分け」が家の軒先にそっと置いてあることがままある。とはいえ、栽培途中の株は、お裾分けには時期が早過ぎる。鉢植えも異例。黒大豆は畑に地植えするのが一般的。
倉庫の所有者の小西昌弘さん(77)が、泊まりがけの外出から戻った7月21日、鉢の存在に気づいた。整然と並べられた5つの鉢に植物が1本ずつ植わっていた。書き置きはなかった。友人の誰かが置いていったんだろうと、思いつく10人ほどに尋ねたが、該当人物はいなかった。
気持ち悪いから捨てよう、と家族に言われるが、大ぶりの鉢に土がたっぷり入っていて、小西さん1人では動かせない重量。持ち主が名乗り出てくる可能性もあると、捨てられずにいる。「不法投棄や落とし物ではないと思う。別のお宅と間違えて、うちの倉庫に置いていったんじゃないか。誰かのいたずらかなあ」と推理が止まらない。
黒枝豆は丈が30―50センチどに成長。軸の根本に土を入れ、風で倒れないよう支柱も立ててやろうと考えている。「意図が分からないのが困る。誰かが『自分の仕業』と言ってくれたら楽になる」と、切実に珍事の真相を知りたがっている。
小西さんは、10年ほど前に山際の畑に植えていた黒大豆を収穫直前にシカに食べ尽くされて以来、心が折れ、黒大豆は栽培していないという。