「丹波の祇園さん」の愛称で親しまれている波々伯部神社(丹波篠山市宮ノ前、近松戝宮司)の「祇園祭」が3、4の両日、行われた。4日の本宮で行われる、氏子衆の引く山車が田園風景の中をゆっくりと進む渡御は、熱中症防止を考慮して山車の巡行を休む集落もあり、通常の半分の4基(集落)のみ参加。高齢化で引き手が減る中で、近年の厳しい暑さが加わり、真夏の伝統行事を続ける難しさが垣間見える形となった。
自治会長や宮総代、神社関係者らが7月に行った、山車の安全な巡行などについて打ち合わせる協議会の席で熱中症対策も話し合い、今年から▽熱中症特別警戒アラートが出た場合は山車の巡行は中止▽警戒アラート以下の段階では、山車の巡行の可否は各自治会の判断に委ねる―と取り決めた。以前から十分な飲料水を確保したり、看護師2人に常駐してもらったりする対策はしていた。
3日の宵宮には、氏子8集落から8基の山車が参集。山車の提灯がともされた幻想的な雰囲気の中、境内で若衆が山車をひきまわし、多くの来場者の注目を集めた。
4日の本宮は、気温の状況から山車の巡行は各自治会の判断となり、辻、小中、畑市、宮ノ前の4集落の山車が同神社に参集。約1㌔離れた御旅所の大歳神社までの渡御が行われた。案内人の猿田彦などの後に山車が続き、威勢の良いはやしを響かせながら、緑の稲穂が波打つ田園風景の中を進むと、その様子を撮ろうと、写真愛好家らがしきりにシャッターを切っていた。また両日にわたり、神戸学院、兵庫県立、関西国際、神戸の各大学の学生や市地域おこし協力隊員らも参加し、祭を盛り上げた。
山車の参加が減ったことに近松宮司(77)は、「寂しさはあるが、1人でも熱中症を出したくないという思い。何より命が大事」と話す。
宮総代代表の井上満さん(76)は、「伝統は守りたいという皆さんの強い思いがある。その中で山車の引き手の健康を考えるとき、今後、どのように判断していけばよいか悩ましい」と複雑な心情を吐露していた。