昨年の猛暑で乳白米などが多く、販売に回る一等米が少なかったことなどを理由に、兵庫県丹波市内を含む全国のスーパーの店頭から米が消えている。都市部の「米不足」が、産地の丹波市内の野菜直売所に影響。盆あたりから品切れ、あるいはごく少量の取り扱いとなり、直売所や生産者に「お米ないか」の問い合わせが相次いでいる。新米が出回り始めるまでもうしばらく、田舎でも騒ぎは続きそうだ。
もともと全国的に品薄だったところに、盆前の「南海トラフ地震臨時情報」の発令で備蓄用の米需要が都市部でいっそう高まった。都市部に住む家族や友人に送りたいと、地元客が買おうとした時にはほぼなくなっていた。スーパーに品物がなく、直売所や生産者から直接買おうと動いても、先に気づいた人が同様の行動を取っていた。新米が出る直前で、生産者も在庫を減らしている時期だ。
JA丹波ひかみとれたて野菜直売所は、丹波ひかみ米(コシヒカリ)の玄米が例年より2カ月早い6月末で完売。精米は8月11日で完売した。前年より多く米を確保していたが、売れ行きが見込みを上回った。昨年9月15日の販売開始から売り切れまで、コシヒカリ精米10キロ4250円、5キロ2200円の価格は変えなかった。
前川智店長は、異変をゴールデンウイーク明けから感じていたという。付き合いのなかった阪神間の外食産業から「取引先に米がない。購入したい」と引き合いが非常に多かったという。次に、農村より早く米不足が顕在化した都市部の消費者が敏感に反応、まとめ買いをする人が増えた。在庫が少なくなり、7月中旬から「1人1袋」に制限。最後に米不足に気づいたのが、これまで「いつでも買える」状況にあった地元客、という構図。
在庫の問い合わせが電話だけで日に20―30件あるという。前川店長は「新米の販売開始は9月中旬。それまでに価格を含め公表があるだろう」と話している。
市内の他の野菜販売所も同様に品薄で、生産者に出荷を促し、少量ずつ店頭に並べているが、入荷してもすぐに売れ、棚に品物のない時間が長くなっている。
丹波市内のある生産者は、「こんなに需要があるなら、早く売り切らず、在庫を抱えておけば良かった」と苦笑い。「毎年、新米が取れても農家は在庫の古米を食べ続けている。今年は、不良在庫がなく、すぐ新米が食べられる農家が多いのでは」と話している。
同市認定農業者会の堀謙吾会長は、米の生産、卸、小売りをする「まるきん農林」を営む。「米がないわけでない。先に注文を聞いているレストランなど、業務用米の納入を断るわけにはいかない。米が足りないのは、一般流通部分だけ。日頃からスーパーで買っていた人。生産者とつながっていた人はなんとかなっている」と指摘する。
「いちげんさん」からの問い合わせが多数あり、業務用を確保した残りを小売りしていたが、23日で完売した。価格は据え置いていた。「買いに来た人に『スーパーの米が値上がりし、価格差はほぼない。日頃から、地元の生産者から米を買って』と、消費行動の見直しを呼びかけた」という。