障がい者も芸術で地域に溶け込む 福祉法人にユニバーサル社会賞 音楽や美術で心のバリアフリー促進

2024.08.01
地域注目

さまざまな芸術・文化活動を通して地域に溶け込んでいる利用者ら=兵庫県丹波篠山市東吹で

兵庫県丹波篠山市を拠点に、障害福祉サービス事業を展開している一般社団法人・みずほの家(山中信人代表理事)が、県の「ひょうごユニバーサル社会づくり賞」の団体部門で県議会議長賞を受賞した。年齢や性別、障がいの有無などにかかわらず、全ての人が地域社会の一員として尊重され、支え合える社会の実現に取り組む個人・団体を顕彰するもの。同法人は利用者と共に音楽や美術などさまざまな芸術活動を通して地域に溶け込み、心のバリアフリーを促進していることが評価された。

同法人は短期入所「みずほ」(同市北新町)、「ひこうき雲」(同市東吹)、共同生活援助「ななつ星」(同市北新町)、生活介護「みずほの家マザーハウス」(同)などを運営しているほか、行動援護サービスも提供。県内20市町から約250人が利用し、医療的ケア児・者や車いすユーザーなどの重度障がい者を優先して受け入れている。

サービスの中で重視しているのが、重度障がいがあっても、芸術活動を通した楽しみや喜びを感じる機会を提供していること。同法人から13人が実行委員として参画している「兵庫・丹波篠山国際とっておきの音楽祭」などには、利用者でつくる音楽隊やダンスチームが参加し、元気いっぱいのステージで会場を盛り上げている。

美術にも力を注いでおり、施設内で「芸術祭」を開催し、他団体も招くなどして交流。県障害者芸術文化祭の受賞作品展にも賛助展示したこともある。

また、能登半島地震で被災した石川県輪島市の施設とも交流しており、共に一つのアートを制作するなどして、心の支援にも取り組んでいる。

利用者がどんどん地域に出て住民と交流するさまざまな活動のきっかけをつくっているのが、多才なスタッフだ。音楽家や芸術家、ダンス指導者などの顔も持つ人が介護に携わっていることで、通常の福祉の枠を超えた取り組みにつながっている。

ユニバーサル社会づくり賞の団体部門で県議長賞を受賞した「みずほの家」のスタッフら

2015年、創設者で現理事の山中信彦さん(68)と妻の泰子さん(68)が、重度の脳性まひを抱え、2010年にこの世を去った愛娘・瑞穂さんへの思いを形にするために障害福祉事業をスタート。「自分たちも大変さを経験しているので、同じ思いを持っている人を応援したい」と短期入所を作り、利用者や家族のニーズに応えながら事業所を増やしてきた。

娘の名を冠した法人の受賞に山中さんは、「うれしい」と喜び、「重度障がいの人は芸術文化とは無縁と思われるかもしれないが、実は一番感性が豊かで、その才能を職員が導き出してくれた結果。利用者や家族の皆さんにも感謝したい」と話す。

授賞式に出席した施設管理者の桐山美和さん(55)は、「受賞を機にさらにまちに溶け込み、地域の人にももっと活動を知ってもらえたら。最終的にはまち全体がユニバーサルな場所になればうれしい」とほほ笑んでいる。

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