新属新種の恐竜と判明 17年前に発掘の化石 「アジア→北米」証拠の可能性

2024.09.03
地域歴史注目自然

兵庫県丹波篠山市の地層から発掘され、新種と判明した角竜類「ササヤマグノームス」の復元図(©田中花音)

兵庫県立大学、県立人と自然の博物館(同県三田市、以下ひとはく)、岡山理科大、カナダ・カールトン大の国際研究チームは3日、2007―08年に同県丹波篠山市宮田の約1億1000万年前の前期白亜紀の地層「篠山層群大山下層」から発掘された恐竜化石が、植物食の原始的な角竜類「ネオケラトプス類」の新属新種と判明した、と発表した。学名は、「ササヤマグノームス・サエグサイ」。「篠山の地下に隠された財宝を守る小人」を意味し、丹波地域の恐竜化石発掘調査を指揮してきた元ひとはくの主任研究員で、22年に逝去した三枝春生さんの名字と合わせた。化石は11月10日まで同博物館で展示している。

2006年に同県丹波市山南町上滝の篠山層群で竜脚類タンバティタニス(丹波竜)が発見されて以来、三枝主任研究員を中心に調査が行われてきた。宮田では07年、地学愛好家で丹波竜発見者の一人でもある足立洌さん(81)=同市柏原町南多田=が、小型脊椎動物化石が密集する地層と数点の骨格化石を発見。足立さんとひとはくが予備調査を行い、その際、今回の新属新種と判明した角竜類化石3点が見つかっていたが、当時は原始的なネオケラトプス類であるということ以上の詳しいことは分からなかった。

引き続きひとはくが調査を進めた結果、13年に新属新種の哺乳類ササヤマミロス・カワイイ、15年には新種のトカゲ類パキゲニス・アダチイの発見につながった。
角竜類の化石も同所から当初の3点に加え、これまでに計17点が見つかっており、うち15点が頭骨、1点が肩の骨(烏口骨)、1点が後ろ足の骨(脛骨)と判明。これらの骨格化石の特徴が、他の角竜類に見られないことから新属新種と結論付けた。

ササヤマグノームスの化石。頭骨、烏口骨、脛骨がバラバラの状態で発掘された。推定される頭骨の大きさは長さ約13㌢、高さ約8㌢

角竜類は、頭部に大きな角やフリル(襟飾り)を持つ草食恐竜のグループで、後期ジュラ紀―白亜紀の終わりごろまで北半球に広く分布していた。代表的な角竜類に北アメリカのトリケラトプスが挙げられるが、最も古い化石は中国に分布する後期ジュラ紀の地層から発見されていることから、角竜類はアジア起源と考えられている。

ササヤマグノームスは、原始的な角竜類であるため、大きな角やフリルを持たなかった。全長約80センチ、体重約10キロと推定しており、成長途中の若い個体であることも分かった。

研究チームの系統解析で、ササヤマグノームスは北米の原始的な角竜類と極めて近縁であることが分かり、アジアで誕生した角竜類が北米へと渡った時期が、1億1000万年前ごろだった可能性を指摘。この時期はユーラシア大陸東部と北米大陸西部が地続きとなる「ベーリング陸橋」が形成されており、極端な温暖期でもあったことから、ササヤマグノームスのようなアジアの原始的角竜類は北上し、陸伝いに北米大陸まで生息域を広げることができた可能性があるとした。

足立さんは、「恐竜がベーリング陸橋を渡って生息域を広げたということは知っていたが、その確たる証拠はなかった。まさか自分の発見がその納得につながるだなんて」と喜び、「篠山層群はすごい。地層に興味を持ち、調べてくれる若者たちが出てきてくれることを期待したい」と話した。

同博物館の田中公教主任研究員(37)は、「篠山層群から発見された化石には、いまだ系統的位置が不明な分類群が数多く存在する」とし、「系統分類学的な研究を進めることで、アジア東縁部と北米大陸との生物相の類似性や、白亜紀中頃における動物の生息域拡大ルートも明らかにできる」と話した。

ひとはくは今年7月にも、県立並木道中央公園の篠山層群大山下層から見つかった化石が、鳥類に近い系統で肉食の小型恐竜「トロオドン亜科」の新属新種だったと発表している。

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