「諸芸上達」で新お守り 国重文の能舞台にあやかり 未来の宮司候補の支えにも

2024.12.31
地域歴史注目観光

能舞台にあやかって作った諸芸上達のお守り

兵庫県丹波篠山市黒岡の篠山春日神社の氏子らでつくる崇敬会が、今年改修を終えた国重要文化財の能舞台にあやかった「諸芸上達」のお守りを制作し、授与を始めた。コンサートなどで能舞台の一般使用も検討しており、文化財の保存から活用へと精力的に活動を進める。また、専属の宮司候補のめどが立ち、未来の若手宮司を支える体制づくりにも生かしたい考え。氏子らは、「その年最初の芸能として、元朝の午前零時過ぎに能が行われるなど、能舞台には芸能の神が宿る。歌に踊り、芝居に音楽と、芸能活動をする人はぜひお守りを頂いてほしい」と初詣の参拝を呼びかけている。

諸芸上達のお守りの初穂料は800円。“右肩上がり”の竹をあしらい、さまざまな芸能の上達への祈りを込める。他に開運厄除けや無病息災、学業成就などの文字をしたためたのぼりも作り、境内に彩りを添えている。

能舞台は、江戸時代の文久元年(1861)、篠山藩主の青山忠良が建立。西日本屈指の名舞台として2003年に国重文になった。毎年1月1日の午前零時20分から元朝能「翁」が上演され、国内で最も早い能として知られる。今年、35年ぶりの大改修を行い、屋根のふき替えや耐震工事などを行った。

一方、20年ほど前に当時の宮司が他界してからは他神社の宮司が兼職している。そんな中、元市地域おこし協力隊員の瀬戸大喜さん(32)=宇土=が神職を目指して学んでいることから、将来の宮司候補として白羽の矢を立てた。

のぼりなども作製し、神社の盛り上げに奔走している氏子らと、宮司候補の瀬戸さん(左から2人目)=兵庫県丹波篠山市黒岡で

例年、元朝能や、桜と共演する「春日能」、丹波篠山最大の秋祭りが営まれるなどにぎわいを見せるが、普段は閑散としているため、「若い世代が宮司として生計を立てていくためには、さらに神社を盛り上げないと」と考えたのが崇敬会と氏子責任役員の足立義則さん(66)=同市二階町=ら。参拝者を呼び込むことを狙った新たな授与品として諸芸上達のお守りを考案した。過去には有名ミュージシャンが勧能に訪れたといううわさもヒントにした。

足立さんは、「コーラスや楽器演奏、芝居などをされている方や、スピーチが苦手な人などに手にしていただければ」と笑顔。能舞台の貸し出しも検討しており、「せっかく多額の費用をかけて行った改修。保存するだけでなく活用していきたい。多くの観光客が訪れる城下町の中心にある。とにかくにぎやかな神社にして若い宮司を支えたい」と意気込む。

2026年に神職の資格を得る予定の瀬戸さんは、「ありがたいこと」と言い、「協力隊員時代から地域のまちづくりに取り組んできた。春日神社だけでなく、丹波篠山市全体を盛り上げていくことが夢」と話している。

元日から5日までは毎日午前10時―午後4時までお守りや御朱印などを授与している。

関連記事