度肝抜く精緻な彫金 ジュエリー作家・石井雄次さん 連載「丹波篠山 工芸と人と」

2024.12.05
地域注目

精緻な技術が光る「ギミックジュエリー」。動きます

◎彫金 石井雄次さん(53)=兵庫県丹波篠山市知足=

今にも飛び立ちそうなトンボ。触れれば音が鳴りそうなバイオリン。それらを形作る極細の針金の一本一本まで、すべてのパーツが元は金や銀のバー。技能グランプリで日本3位に輝いた彫金の技に驚いていると、「これは動くんですよ」―。ただただ脱帽するしかない。

精緻な仕事は常人の度肝を抜く。時計の仕組みを応用した〝動くジュエリー〟は、自ら生み出した「ギミックジュエリー」。展示で大行列を呼んだこともあれば、ドイツの美術館で称賛の嵐になったこともある。

ギミックだけでなく、指輪やネックレスなども手がける。古いジュエリーをペンダントなどに生まれ変わらせるリメイクも好評。チェーンが切れた、指輪のサイズを変えたい、などの困り事にも対応する。

大阪府豊中市出身。美大を卒業後、シルバージュエリー作家の背中を見て学んだほか、図書館に通い詰めて独学で彫金技法を習得した。

数多くの道具が並ぶ工房。ここから作品が生まれる

父は金型を作る職人、祖父も銅板を叩いていた。工場と芸術。分野は違えど同じ金属を扱う生業に「血というか、蛙の子は蛙ですね」と笑う。

気づけば、「ここまでできる人はなかなかいない」と言われるほどの技術になっており、ジュエリー製作の企業に就職。その後、独立した。

古民家で暮らしたいと思っており、「集落丸山」を知って、日本の原風景にほれ込み、市内で物件を探すことを決意。2013年に移住し、河原町でのチャレンジショップ、熊谷での工房開設を経験した。

そして、理想の物件へ。そこは高台からあの集落丸山を望む知足地区の古民家だった。ついに今春、夢だった工房とカフェを兼ねた「noof(ヌーフ)」をオープンした。

職人生活30周年。「ここまで残れている職人はほぼいない。お客さまのおかげです」と感謝。「職人って寡黙と思われがちですが、私はおしゃべりが大好き。これからもここでいろんな人のつながりをつくっていきたい」とほほ笑んでいる。

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