米と野菜を定期便に 山あい「小規模」に価値を 農家の思い伝える専門人材雇用へ

2024.12.04
丹波篠山市地域注目買う

米と野菜の定期便「篠来たる」の一例と、PRする鈴木さん=兵庫県丹波篠山市味間新で

獣がい対策に取り組む兵庫県丹波篠山市のNPO法人・里地里山問題研究所(さともん、鈴木克哉代表理事)が、同市内の山あいで採れた米と旬の有機野菜のセットが毎月届く初の定期便「篠来たる」の申し込みを募っている。初年度は限定15人。この売り上げで、ホームページや交流サイト(SNS)などさまざまな媒体を使って獣がい対策の取り組み、農家や地域の思いを伝える専門人材を雇用したい考えで、販促にまで手が回らない新規就農者の支援につなげる。

米は、同市の最北端に位置し、由良川の最源流域にあたる同市西紀北地区の川阪産。野菜は有機野菜生産者グループ「篠山自然派」が供給する。毎月、玄米2キロと6―8種類の野菜をセットにする。初年度限定価格で、月払い5500円(税込み)、年一括払い6万6000円(同)。

現在、年一括払いキャンペーン(12月―来年9月分)として、2カ月分1万1000円を値引きするか、家庭用精米機(1万2000円相当)をプレゼント。精米したての味を楽しんでもらう試み。

同法人代表理事の鈴木さん(49)によると、山あいの集落は高齢化、過疎化が進み、農業と獣がい対策両方の担い手が不足している。農村は、草刈りや鳥獣害防護柵の点検など農業に関わる作業を通じてまとまりを保ってきた歴史がある。農家が減ると、獣がい対策を必要とする人も減り、野生動物のすみかになる、という悪循環を生む。

清らかな水と、寒暖差のある気候の中で、小規模農家が丹精して育てた川阪産米は、市内外の人から好評を得ている。ただ、形がいびつな小さな農地が多いため収量が少なく、農家の高齢化が進んで後継者不足が課題になっている。

また、有機野菜に関しては、「篠山自然派」が学校給食に取り入れてもらおうと活動しているが、障害になっているのが規格(サイズ)。調理が機械化されているため、規格外の野菜が扱えない課題があり、栽培規模を広げられないでいる。

同法人は、両者に共通する小規模農家の支援という視点に立ち、「小規模」に価値を付ける取り組みの一つとして定期便を企画。鈴木さんは、「里山の未来を守る定期便。契約者を徐々に増やし、発信する専門人材を雇用することで、特に新規就農者には生産に集中してもらえるのではないか」と話している。

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