文化体験の拠点を 市内初の能舞台建設へ 能楽師の上田さん

2025.01.25
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能舞台などを含む文化体験施設を建設している伝楽舎の上田さん=兵庫県丹波市氷上町石生で

能楽小鼓方の上田敦史さん(51)=兵庫県丹波市=が代表を務める会社「伝楽舎」が、同市氷上町の水分れ公園そばに能舞台や茶室などを備えた文化体験施設を建設している。三間四方(5・4メートル四方)の能舞台は、最大60人まで鑑賞することができる。客室も準備し、宿泊にも対応。定期公演を開催するだけでなく、施設を地域に貸し、広く日本文化に親しみを持ってもらう機会に活用したり、インバウンド事業を展開したりする。建設費は、融資や観光庁からの補助金などを活用するが、3月末まで有志からの寄付を募っており、上田さんは「地域の魅力や誇りとなる施設にするために、温かいご芳志を頂ければ」と協力を呼びかけている。夏頃の完成を目指し、秋にこけら落とし公演を計画している。

鉄骨造で、延べ床面積は200平方メートルほど。地域で親しまれているいそ部神社の鳥居前に位置する。上田さんによると、県内では能楽堂や、能舞台がある神社などはあるが、丹波市を含む近隣に屋内の本格的な能舞台はないという。

能舞台には「ひのき舞台」の語源の通り、床板にヒノキを張る。シンボルとなる松の絵が描かれた「鏡板」は、10年ほど前に市内で公演があった際に使用されたもので、長く活用されていなかったものを譲り受けた。

茶道や着付けの体験ができる和室のほか、寝室を兼ねたスペースを設けており、1グループ10人までが宿泊できる“一棟貸し”もする。囲炉裏もあり、食文化の体験もできる。

建設中の内部

10年前に同市に移住。「新丹波猿楽座」を立ち上げ、公演開催や、子どもたちに能楽体験をしてもらう機会を設けたり、市にゆかりがある新作能をつくったりと、能楽を主とする伝統芸能の振興に努めてきた。これらを地域に根付かせるために、活動の拠点を設けたいという思いが募っていたという。

上田さんは、「能を中心としながらも、子どもや日本文化の愛好者が、ひのき舞台に立つ機会を設けたい。丹波は猿楽のルーツで、かつて文化のトップランナーだった。丹波の素晴らしさを“再構築”できるような施設にしたい」と夢を描く。

世界から客を招いて宿泊してもらい、日本文化を体験してもらうインバウンド事業にも力を注ぐ。また、地域住民に気軽に能を楽しんでほしいと、無料で公演に招待する企画も実施。日本文化を体験する事業として、専門講師を招いた能の稽古や茶道教室の運営、日本文化の普及を目的とした貸し舞台事業を展開する計画。また、丹波市を楽しんでもらう国内ツアーに、能舞台での鑑賞や体験を組み込んでもらうことも予定している。

個人は1口1万円、法人は同5万円で寄付を募っている。寄付者は、完成記念冊子に名前を掲載する。また、個人5口以上、法人2口以上で寄付名板に名前を掲載する。振込先など詳細は専用ホームページ(https://noh-experience.com/?page_id=356)で確認を。

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