16年間の活動が結実 県知事表彰受ける 多紀連山のクリンソウを守る会

2025.01.15
ニュース丹波篠山市地域自然

県知事からの「人間サイズのまちづくり賞(花緑部門)」の表彰状を手に、受賞を喜ぶ細見会長(左)と津田さん=兵庫県丹波篠山市黒岡で

兵庫県丹波篠山市の市民団体「多紀連山のクリンソウを守る会」が、県知事がまちづくり活動に顕著な功績があった団体を表彰する「人間サイズのまちづくり賞」の花緑部門で知事賞を受賞した。同会の細見隆夫会長(77)は、「結成から16年。会員皆さんとの地道な取り組みが実を結んだ」と喜ぶ一方で、会員の高齢化と会員数の減少という課題をあげ、「希少植物クリンソウの保護・保全活動に一緒に汗を流してくれる人材を求めている」と呼びかけている。26回目となる同表彰。今年度は知事賞10件、奨励賞7件を選定した。

同会は、みたけ会館(同市瀬利)を拠点に2008年に結成。多紀連山を構成する峰の一つ、「御嶽」(みたけ、793メートル)の山中の広大な範囲に自生するクリンソウを保護・保全するため、片道1時間以上かかる山奥の群落地へ年に10回以上通い、観察路や看板の補修作業などを行っているほか、10カ所で植生調査や生育状況の定点観測を実施。花の最盛期には地元、城北畑小学校5年生を自生地に案内して地域の自然の大切さを伝えている。年1回の総会、研修会の実施や機関紙発行なども続けている。

自生地一帯は、鎌倉―室町時代の頃に栄えた丹波修験道場であり、それらに関連した宿坊や庵跡と推定される平たん地や、大岳寺(みたけじ)跡が残っている。同会事務局の津田博利さん(78)は、「かつてはほら貝が響き、錫杖の音がこだまする信仰の山だった。このような歴史ロマンも活動の原動力になっている」とほほ笑む。

クリンソウは日本固有種で、湿地に自生するサクラソウ科の多年草。5月初旬―6月初旬に下段より順次上へ花を咲かせ、1本の花軸に数段輪生して花を付ける様子を仏塔の先端にある「九輪」に見立て、この名が付いた。絶滅危惧種をリストアップした兵庫県版レッドデータブックのBランクに指定。また、同自生地が、規模においても質的・全国的価値に優れた植物群落として、県は「湿地植生Aランク」に指定している。

07年6月、篠山鳳鳴高校9回生の5人が、御嶽の登山道でクリンソウの群生を発見。その後の調査で、約4300平方メートルに約17万株という国内有数の大群落と判明した。「これだけ大きな群生地を人知れずにしておくのは不可能。公開して多くの目で群生地を守っていこう」と同会を立ち上げた。当初は丹波地域のほか、阪神間などから約240人の会員登録があったが、現在は約100人。年会費は1000円。

関連記事