災害時の社会的弱者支援を 温泉施設で初実地研修 防災士がチーム組織

2025.03.26
丹波篠山市地域

酒井扶美さん(右)の案内で館内を見て回り、防災上の問題点を探る「アドボケイターチーム」のメンバー=兵庫県丹波篠山市今田町今田新田で

「ひょうご防災リーダー養成講座」の2023年度修了者で防災士でもある8人が、災害時に社会的弱者を支援する「アドボケイターチーム」を組織。土地勘のない地域で災害に見舞われても、正しい判断と行動で被災者を避難させられる知識やスキルを身に付けようと、このほど、兵庫県丹波篠山市のこんだ薬師温泉ぬくもりの郷で初めての実地研修を行った。館内地図を手に、従業員の案内で館内を見て回り、防災上、問題となる点や場所などをチェック。それらをもとに意見を交わし、施設側に課題を伝えたり、改善策を提案したりした。

アドボケイターは、自分の意見や権利をうまく伝えることのできない患者や高齢者、障がい者などの代弁者。

同チームは、災害現場で被災者を支える防災看護の経験を積んだ看護師の冨田由子さん、川西市を中心に子どもの居場所づくりを展開している植月淳子さんが発起人となって組織し、丹波篠山市からは同市職員の酒井克美さん(36)が名を連ねている。

酒井さんらが「防災士の資格を取得したが、実践する場所がない」と実地研修の場を探していたところ、母で防災士でもある酒井扶美さんが勤める同温泉に声をかけた。同温泉は、利用客の7割近くが阪神間からの来訪で、繁忙期には1日当たり1400人近くが来館。26年度には道の駅としての開業も控えていることから、従業員の危機管理意識の向上と、防災・減災上の新たな気付きが得られる良い機会と捉えた。

館内を視察したメンバーは、防犯カメラや避難誘導灯、消火器の位置などを確認したり、高齢者や障がい者がいざというときにスムーズに避難できる経路であるかなどを検証したりした。

館内の防災上の問題点を洗い出し、改善策の提案に向け話し合うメンバー

話し合いでは、「階段が多く、通路が狭いので、避難時にパニックにならないか」「来館者は裸の場合が多いので、発災時、着替えなどで速やかに避難行動を取るのは難しい」「トイレや空き部屋が多いので、逃げ遅れの人の把握が難しい」「施設にガラスが多用されているので、地震の際には破片が危険」などの問題点を指摘した。

改善策として、「ガラスに飛散防止のテープを貼る」「避難時、飛散したガラスなどでけがをしないよう、タオルを足に巻いてソックス代わりにすることを呼びかける」「外国人にも理解できるよう、避難誘導や防災に関する掲示を視覚的な図記号ピクトグラムで表示する」「火災を想定した避難訓練を従業員対象に年2回行っていると聞いたが、一般客も含めた防災イベントのような形で実施してみては」などと提案した。

同チームは、「こんだ薬師温泉とは、今後も継続的に関わりを持たせてもらいたい。従業員対象の避難訓練に参加し、防災・減災につながる提案をさらに深くまとめていきたい」と意欲的に語った。

また、土地勘の利かない初めての場所でも、発災時、最適な避難経路を示してくれるスマートフォンの防災アプリの開発も進めていく予定という。

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