今年1月に90歳で亡くなった、兵庫県丹波市春日町多田の義積喜美子さんによる絵本「おばあちゃんの太平洋戦争」を書籍化したいと、「たんば手づくり絵本の会」が14日からインターネットを通じて寄付金を呼びかけるクラウドファンディングを始めた。同会主宰の村上祐喜子さん(70)は「戦後80年の機に、平和への思いを皆さんの所に届けたい」と支援を呼びかけている。
2005年に手描き、手作り製本で完成した絵本で、20年に約500部を自費出版した。現在は在庫がなくなっている。
絵本は地域内外で平和学習などに活用されてきた。23年には毎日新聞の記事がきっかけとなり、兵庫県立芸術文化センター(西宮市)での戦争朗読劇に合わせてロビーで展示された。多くの人が手に取る様子を見て、村上さんは「絵本が“一人歩き”し、反戦への思いを伝えている」と感じたという。
義積さんは1941年(昭和16)、国民学校に入学。その年の12月8日に太平洋戦争が勃発し、5年生で終戦を迎えた。「おばあちゃんの―」では、学校のグラウンドを開墾してサツマイモやカボチャを作ったこと、地区の寺が沖縄から疎開してきた子どもたちであふれていたこと、終戦直後、教科書を「墨塗り」にしたことなど、丹波の戦中戦後の生活を子どもの目線で描いている。
20年前に70歳で「手づくり絵本の会」に入会した義積さん。戦争を題材にしたものも約10冊あり、小学校などで体験を語る活動もしてきた。村上さんは「手作り絵本は世界に1冊だけなのが魅力だが、劣化してしまう面もある。義積さんの情熱をこのままにはしておけないという“使命感”を感じた」とも話した。
寄付はクラファンサイト「キャンプファイヤー」で、5月23日まで受け付け中(下記QRコード)。プロジェクト名は「喜美子おばあちゃんの戦争体験絵本を出版:80年目の証言」。寄付額は5000―5万円まであり、返礼品は出版絵本(B5判、24㌻)のほか、絵葉書セット、丹波産米、神戸ビーフなどを用意している。目標120万円。500冊を発行し、終戦日の8月15日までに支援者の手元に届ける予定。
「へいわってすてきだね」などの著書がある絵本作家、長谷川義史さんもサイトで応援メッセージを寄せている。
篠山で絵本展
兵庫県丹波篠山市郡家の「喫茶 美貴」で、25日から義積さんの絵本展が開かれる。生涯に手作りした約40冊を入れ替えながら展示する予定。