兵庫県伝統的工芸品に指定されている「稲畑人形」作家の赤井君江さん(91)=丹波市氷上町=と、画家の足立進さん(61)=同=による「2人展」が、植野記念美術館(同町西中)研修室で15日から始まった。赤井さんは稲畑人形を70点、足立さんは但馬、丹波、丹後、播磨地方の風景画を中心に53点を出品。「大阪・関西万博開催記念」と銘打ち、「地域文化の発信になれば」としている。入場無料。20日まで。
赤井さんは元小学校教諭、足立さんは元中学校教諭。38年前に小中学校の教員らでつくる「兵庫教育文化研究所」(神戸市)で、美術教育部会の指導助言者(赤井さん)と、研究所員(足立さん)として出会い、約10年間、一緒に県内の美術教育向上に向けて熱心に活動した。新米教員だった足立さんは、赤井さんから児童生徒に主眼を置いた厳しい助言を受けたと言い、「いわば“師弟”関係」(足立さん)だったという。足立さんが同研究所を離れる際に「退職したら2人展を」と話し、15年越しの約束を実現した。
稲畑人形は、赤井さんの曽祖父が郷土玩具として江戸末期に作り始めた土人形で、赤井さんは5代目。初代から受け継ぐ「天神さん」をはじめ、「饅頭喰い」、「舞姫」、動物ものなどを出品している。「饅頭喰い」は、父と母どちらが好きかと聞かれた童子が、まんじゅうを半分に割り、どちらがおいしいかと反問したという中国の伝説に基づく人形。「こういう賢い子を育てようという思いがこもっている」と言い、好んで作ってきた。
足立さんの作品は、県内で題材を探した風景画が大半。丹波新聞社で2月に個展を開いた際の出品作とは3分の2以上が異なるという。「さびれていたり、昔の生活が感じられたりするような場所に引かれる」と言い、透明感のあるタッチで田舎の風情が精緻に描き込まれている。
互いの作品について、赤井さんは「人柄が表れている絵で、何度見ても心が和む」と言い、足立さんは「単なる民芸品ではなく、プロが作った“作家もの”。特に目が素晴らしい」と魅力を話していた。
赤井さんは、現在は人形制作を請け負っていないが、沼貫交流館(氷上町佐野)で稲畑人形教室が月1回開かれ、教室生らが技術を学んでいる。
午前10時―午後4時半。