情報通信技術(ICT)を活用したスマート農業の普及に取り組む兵庫県丹波篠山市のJA丹波ささやまは、農業機械の自動走行などに利用できるRTK(リアル・タイム・キネマテック)基地局を同JA農機事業所(同市八上上)に開局した。今月から運用を開始した。基地局設置により、自動操舵システムを搭載したトラクターや田植え機を動かした際、これまで50センチ前後と大きかった誤差を、2・5センチ前後に収めることができるという。農業従事者の減少や高齢化が進む中、スマート農業の導入により、うね立てや種まき、農薬散布、苗の植え付けといった農作業の省力化と効率化が図れる、と期待を寄せている。
RTK基地局の設置は、JAグループ兵庫管内では初。これまでにもアメリカのGPS、日本の「みちびき」など各国の人工衛星から位置情報を活用したスマート農機は運用されてきたが、誤差が大きいことが課題だった。RTK基地局と人工衛星からの測位データを併用することで位置情報の高精度化を図っている。
基地局1基で、半径約20キロメートルの範囲をカバーするため、同事務所の基地局だけで丹波篠山市内全域でスマート農業の運用が可能という。
同事務所でこのほど、基地局開局セレモニーが行われ、関係者約40人が出席。代表5人でテープカットを行い、農機の自動化に向けた門出を祝った。
JA丹波ささやまの池本淳代表理事組合長は、「RTK基地局開設は、営農活動の大きな転機となる。丹波篠山の農業がさらに魅力的になり、若い世代が農業に興味を持ってくれるきっかけにもつながる。地域の豊かな農業が新たなステージへと展開するように願っている」とあいさつした。
式典後、自動操舵システムを搭載したトラクターと田植え機を動かすデモンストレーションを実施。運転席に座ったスマート農機メーカーの社員が、両手を挙げてハンドル操作をしていないことをアピールした状態で、何度も直進と旋回を繰り返し、自動運転の正確さを披露した。
メーカーによると、同システムは、さまざまなメーカーのトラクターや田植え機などに100万円程度で後付けすることができるという。