55年ぶり映画館復活 映画監督が「街興しに」 稼動率低いホール活用

2025.04.12
丹波篠山市地域地域歴史注目

4月から映画上映事業が始まったさぎそうホール=兵庫県丹波篠山市今田町今田新田で

暴力団事務所跡を買い取って映画館「ヱビスシネマ。」(兵庫県丹波市氷上町成松)を開館、運営している株式会社コドルニス(同市青垣町山垣、代表取締役・近兼拓史さん)が、同県丹波篠山市立さぎそうホール(今田町今田新田)で映画上映事業を始めた。同市内では、東新町にあった「楽天座」が1970年4月に火災で焼失して以来、映画館はないため、実に55年ぶりの復活となる。同社は、「将来は年間1万人以上の入館を目指したい」と話している。

同ホールの新たな活用方策。これまで通り田園交響ホールが管理するが、映画事業は同社が「メガヱビス。」の愛称で運営する。市は、同事業が公益的な側面もあるとして無料で貸し出す。

上映期間は、空調を必要としない3―6月と10―11月の計6カ月間。上映日は、他団体が使用しない日に毎日上映する。開館時間は午前10時―午後10時。

客席数は、「ヱビスシネマ。」の50席に対し340席、スクリーンサイズは4倍に当たる400インチ。エンターテインメント作品だけでなく、新作のミニシアター系の作品や全国で話題になっているインディーズ映画を扱う。また、丹波篠山でロケが行われた作品や、子どもが楽しめるアニメーション、ファミリー向けの映画も予定している。上映スケジュールは基本、2週間ごとに変えていく計画。現在、「パピヨン」「侍タイムスリッパー」「銀幕の詩」を上映している。

400インチのスクリーンが配備された館内と看板を手にする近兼さん(提供)

同ホールは1999年に開館するも稼働率の低迷が続き、2009年4月から年4カ月(春、秋)のみ開館。今田中学校入学式や高齢者大学さぎそう学園、今田地区文化の祭典など年30日程度しか利用がないのが現状。

映画監督でもある近兼さん(63)は、17年以来、「丹波を映画による街興し」プロジェクトを進めてきた。18―19年、丹波市を舞台とした映画「恐竜の詩」を制作・上映し、21年に「ヱビスシネマ。」を開館。20―22年には、映画「銀幕の詩」を制作・上映し、23年、同市で丹波国際映画祭を初開催。翌年の第2回映画祭で同ホールを会場の一つとして使用した。その際、同ホールの稼働率の低さを知り、以前から常設映画館を開設できる公共施設を探していたこともあって、映画館としての活用を丹波篠山市に提案していた。

近兼さんは、「道の駅にもなる近くのこんだ薬師温泉と連携し、ここに来れば楽しめる、という流れをつくりたい」と力を込め、「映画によるまちおこしを旗印に取り組んできて、ついに2つの市にまたがって映画上映ができるようになった。丹波篠山は、『十一人の賊軍』『室町無頼』『レジェンド&バタフライ』など多くの映画のロケ地になっている。エキストラで参加された市民が、その映画を地元で見られることも喜びの一つとなるのでは。撮影に協力した映画の上映の際に、監督や役者を呼ぶチャンスもできた」と話している。

映像投影機材や音響機材などの設備整備費は全て同社が負担。約1000万円が必要となるが、クラウドファンディングで資金を調達する計画。映画館運営ボランティアも募集している。上映スケジュールなどはホームページ。

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