枯れない水源”宝” 池に井戸掘りポンプ設置 連載”まちの世間遺産”

2025.08.18
ニュース丹波市地域地域歴史注目

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、兵庫県丹波市氷上町沼の「清水池」です。

清らかな水をたたえる清水池。ポンプが2基設置されている=兵庫県丹波市氷上町沼で

県道青垣柏原線の兵庫県丹波市青垣町栗住野との旧町境にある同市氷上町沼自治会の水源。弁財天が祭られ、名前の通り、常に澄んだ水をたたえている。記録的な少雨の今夏も枯れず、田畑を潤している。

留池とも呼ばれる。いつ造られたかは不明だが、「丹波志」に「享保2年(1727) 沼村清水池禁漁」の記述がある。およそ500年前に存在していたようだ。沼自治会に残る資料には「1883年(明治16) 大干ばつで留池に水車4基を使用し、村人総出で大混雑を極」とある。

魚は、今はいない。50―60年ほど前はコイやフナ、ウグイ、オヤニラミなど魚種が豊富で、村人が漁業権の入札をしていた。毎年、田植え前に池の藻を刈る作業があった。深い所で水深2メートルほど。「冷たくて、5分と浸かっていられず、代わる代わるやっていた」と同自治会の芦田淳一さん(74)は懐かしむ。

1982年(昭和57)、清水池が異常渇水に見舞われた。急速に水位が低下し、60センチほどになった。水路の底より水位が下がり、かんがい用水として使えなくなった。水に困ったことがなく、ショックは大きかった。

県が進める加古川の井堰の撤去など河川改修と、加古川を挟んだ池の対岸で行われた青垣町東芦田の取水ポンプ設置の影響と結論づけられた。池の水は、倉町野(青垣町西芦田)と加古川の伏流水が合わさったものと考えられた。

翌年に清水池渇水対策委員会を立ち上げ、県土木事務所に陳情。85年(昭和60)に県と交渉の末、補償金を得た。池の中に井戸を掘り、ポンプを据え、かんがい施設を再建した。

四十数年前に対策委員を務めた芦田辰夫さん(84)は「これ以上、掘れんという所まで井戸を掘った。以来、一度も枯れたことはない。沼の宝や」とほほ笑んだ。

関連記事