兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市今田町上立杭)のエントランスで、動物の骨格と装飾をテーマに独創的な立体作品を制作し、国内外で注目を集めている気鋭の作家、秋永邦洋さん(47)=同県尼崎市=の作品展「仮想の生命」が開かれている。秋永さんを代表する「擬態化」シリーズの集大成ともいうべき大作「龍」「虎」を一対で展示しているほか、その後に新しく展開した「朧気」シリーズの「鹿」「狼」の計4点を出展。流れるような曲線の重なり合い、金属質の黒の釉薬の妙、どこか隙のない人工的な美しさを放つ秋永さんの創造の世界が垣間見られ、仮想と現実の間で揺れ動く「存在とは何か」を問いかけている。観覧無料。11月24日まで。
精密旋盤による機械加工業を営んでいた父の影響で、幼少期から金属という素材や機械部品の精巧な美しさに魅せられていた秋永さん。土を自由に形作ることができる「手びねり」と、つや消しブラックの「黒マット釉」を造形のベースに据え、曲線を生かしたシャープな抽象形態を追求している。
擬態化シリーズの「龍虎」は、漆黒の鈍い光を放つ動物の骨格標本のような作品。骨の各パーツは陶土を用いて手びねりで作られている。各パーツにはとげや角のような突起物「装飾」を施し、「動物の死」と向き合うことから目を背けるための偽装として機能させたという。
「擬態」は、別のものに成り済ますという意味から「本質が見えにくくなっている現代社会を象徴するもの」としてシリーズ化。第1次トランプ政権下で激化した中国とアメリカの対立が象徴するように、あらゆる所で対立構造が生まれている世界情勢からヒントを得たという。
朧気シリーズの「鹿」「狼」は、やきものの装飾技法の一つ「透かし彫り」を駆使した2024、25年の最新作。確かな肉体を持っているように見えて、実はその輪郭はぼんやりと消えてなくなっていくようなはかなさを表現したという。
同館の著名作家招聘事業として開催している。


























