当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、兵庫県丹波市山南町谷川の久下村駅です。
コンクリートの四角いモニュメントにも見える、”ミニマムサイズ”の「駅舎」がある。JR加古川線久下村駅だ。
雨風をしのげるコの字型のコンクリート打ち放しスタイル。大きさは幅約3・3メートル、奥行き約1・8メートル、高さ約2・45メートル。耐久性と意匠性を重視したという建物は、”工芸美”とも言えそうなたたずまいだ。2019年度に一般社団法人・鉄道建築協会の鉄道建築協会賞で作品部門佳作に入賞している。
JR西日本は、利用規模に応じた「駅舎の適正化」を進めており、久下村駅は2019年3月に現在の姿になった。
昭和30年代後半から約10年間、久下村駅に勤務していた元国鉄職員の藤原貞夫さん(81)は「当時の久下村駅は、3両編成のディーゼルが朝のラッシュ時は満員だった」と回想。そばにある兵庫パルプ工業社関連の貨物などを運ぶ貨物列車も運行し、周辺工場の従業員、西脇や福知山に通う高校生らでにぎわっていたという。
時は流れ、加古川線全線開業100周年を迎えた昨年度の一日平均乗車人数はわずか3人。利用増に向け、久下自治振興会と丹波県民局が8月22日に開催した「久下村夜市」に子どもと電車で訪れた20歳代の女性は、「新しい駅舎を最初に見た時は小さくて驚いたけど、何だかおしゃれですね」とほほ笑んだ。




























