大切なのは集中と根気
幼少の頃から、母いつこさんが作るフランス刺しゅうを見て育ち、身近にあるものだった。本格的に始めたのは30年ほど前。亡くなったいつこさんが大切に保管していた刺しゅう糸などを、「このまま粗末にしておけない」と思い立ち、ほぼ独学で始め、制作にのめり込んだ。
大阪府富田林市で約40年間、保育園と幼稚園の養護教育に従事。退職後、兄妹が暮らす丹波市春日町へ移住。同市内の四季折々の草花を描き留め、刺しゅうに仕上げるうちに、自然の豊かさや土地の魅力を実感したという。
2014年には兵庫県婦人手工芸協会(神戸市)から推薦を受けて入会。全国手工芸美展(全国手工芸コンクール)で計7回入選するなど、長年の積み重ねが結果に表れた。県内を回る巡回展や、県外展にも出品している。他の会員たちが作る、布、紙、ガラスなどの工芸作品を見るのも楽しく、良い刺激になっているという。
2005年から計5回、丹波の森公苑で個展を開き、このほど、植野記念美術館で集大成となる懐古展を開いた。約100点を展示し、「一度はここに自分の作品を展示したかった」と念願がかなった。
刺しゅう作品づくりは、「とにかく集中と根気が大切」。縫い目の細かい個所は、拡大鏡付きのLEDスタンドを使用し、食卓兼作業テーブルで一人黙々と作業する。
「フランス刺しゅうは、続けようと思ってしていたわけではないが、『千里の道も一歩から』というように一針一針縫い続けた結果、いつの間にかここまで来ていたという感じ。これからもゆったりと続けていきたい」。81歳。



























