兵庫県丹波篠山市今田町や大阪府の親子らが、仲間と共に小児がんの子どもたちのためにレモネードを販売し、売り上げを医療機関などに寄付するNPO法人「おおさかレモネードスタンドプロジェクトPilina(ピリナ)」を立ち上げた。8月に同市で開かれたイベントでは、地元、今田中学校の生徒有志も協力。生徒たちは、「がんと闘っている子どもが世界にはたくさんいることを知ってほしい。一人でも多くの人に活動を支えてもらいたい」と呼びかける。10月5日には丹波並木道中央公園(同市西古佐)の収穫祭に、19日には丹波焼陶器まつり(今田町立杭地区で開催)でも販売する。
小児がんを患う子どものきょうだいや保護者らと共に同法人を立ち上げたのは、テイム由香さん(42)=同市今田町上立杭。法人代表は昨年、小児がんのため13歳でこの世を去った土井大地さん(豊中市)の兄で、高校2年生の颯大さんが務める。
ピリナはハワイの言葉で、「つながりや絆を大切にしたい」という意味。活動を通して、小児がんの現状を伝えつつ、「活動に関わる人たちが自分を大切に、より豊かに生きるきっかけになれば」という思いを込めた。
テイムさんの息子で今田中1年のジョージさんは9歳の時に10万人に1人とされる脊髄腫瘍を発症し、手術と抗がん剤治療を経て、奇跡的に治療薬が見つかった。
闘病の中で知り合ったのが大地さん。家族ぐるみで付き合う中、颯大さんは「弟が頑張っているのに、自分は普通に過ごしていていいのか」と葛藤を抱え、「少しでも自分にできることを」とレモネードスタンドの活動を決意したことから、テイムさん親子も一緒に取り組むことにした。
昨年10月の陶器まつりで、実行委員会の協力を得て初めて販売。本番直前に大地さんは他界したが、颯大さんは、「楽しみにしていた大地の分まで、少しでも支援の輪、そして笑顔が広げられるよう頑張りたい」と活動に励み、寄付につなげた。
今田から始まった活動はその後、大阪や奈良を中心に各地で開催するようになり、材料費などを抜いた売り上げを小児がんの治療を行う医療機関やホスピスなどに寄付している。
より幅広く活動し、活動を支援する寄付を受け入れやすい体制にするため、今年7月に法人化。レモンを使った雑貨や、いつでもどこでも販売できるボトル入りのレモネードも作った。
また、ジョージさんの姉で、今田中3年のグレースさんや所属するソフトテニス部の後輩らは8月、今田町で開かれたイベントでレモネードスタンドに協力。参加した山本瑠渚さん、小谷本ゆずさん(共に2年)は、「小児がんのことを知ってもらえたし、子どもたちを支える取り組みに協力してもらえるので、とても良いことだと思った」と話す。グレースさんも、「自分と同じ境遇の人とも出会えるので、患者の家族でしか分からないことも話し合えるのがいい」とほほ笑む。
テイムさんは、「子どもたちは今、この瞬間もがんと闘っている。一日でも早く、役に立ちたいという思いでNPOにした。ぜひレモネードを味わいながら、活動に協力してもらいたい」と呼びかけている。
同法人は、ボトルタイプのレモネードや寄付箱を置いてもらえる場所、活動に協力してもらえるボランティアも募集している。問い合わせは、同法人のホームページから。「おおさかレモネードスタンド」などで検索を。
◆レモネードスタンド アメリカの小児がんの少女と家族がレモネードを販売し、治療薬の研究費に、と寄付したことをきっかけに世界中に広まった活動。人生でつらい試練(酸っぱいレモン)があったとしても、楽しいもの(甘いレモネード)に変えていこうという意味が込められている。

























