当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、兵庫県丹波市春日町・猪ノ口山の「赤門」です。 国指定史跡・黒井城跡がある猪ノ口山の中腹にあり、地域住民から「赤門」と呼ばれて親しまれている。文字通り、その姿は朱色で塗られ、兵庫県丹波市春日町黒井側の登山道から山頂にある同城跡に向かう登山客が一息入れる休憩スポットになっている。
同城の防御、迎撃のために設けられたとされる曲輪「石踏の段」跡に立つ。赤門の歴史は、門の内側に掲げられた説明板が詳しい。もともと、赤門は麓の杉ノ下自治会に祭られていた薬師如来堂の門で、1959年(昭和34)、地域住民が移築したとある。
当時の丹波新聞によると、起工中だった「二級国道」(黒井馬橋―立野間)改修工事用の土砂を薬師堂付近から採取するため、赤門の立ち退きが必要になったとある。真夏の太陽のもとで、関係者が山の中腹まで材木、瓦を担ぎ上げ、150キロある梁を運んだ男性の「生命の危険さえ感じた」というコメントを紹介している。
それから50年余りたち、損傷が著しい状態に。地元の黒井地区自治協議会が実行委員会を立ち上げて修復に乗り出し、資材運搬には子どもからお年寄り、氷上、柏原、篠山産業の高校生も活躍。2010年に修復が完了した。
同城跡に毎朝のように登山している市内の女性(66)は、「山頂で仲間と世間話や近況報告をしたりしてゆっくりしているけれど、赤門があるおかげで雨の日も楽しめます」と話している。



























