「丹波篠山移住の決め手 四季の移ろい 人の良さ」―。今年の日本デカンショ節大賞で優秀賞に入った歌詞のように、美しい四季折々の自然と心やすい人のつながりに引かれ、兵庫県丹波篠山に移り住んだ人がいる。宮本清輝さん(44)一家。宮本さんは昨年まで篠山警察日置駐在所に勤務した元警察官で、今年3月に退職し、市職員に転身。現在は中央図書館に勤務する。〝駐在さん〟から住民になった宮本さんは、「とにかく地域の皆さんがフレンドリーで、自然も美しく、ここで暮らしたいと思った」とにっこり。「一住民として地域のことに携わっていきたい」と語る。
妻の恵さん(43)と3人の子どもたち、ヤギの「ロイ」と生活を送る宮本さんは、大阪府吹田市出身。大学を卒業後、高校の先輩の誘いもあって兵庫県警に入り、垂水署や高速隊を経て篠山署へ。昨年まで家族と共に日置駐在所に勤務した。
驚いたのが、人の良さ。「パトロールをしていると『ありがとう』と言ってもらえたり、パトカーに向かって手を振ってくださったり。『こっちにおいで』と呼ばれて行くと、たくさんの野菜を頂くことも。子どもを水遊びに誘ってもらうこともあった」と振り返り、「それまでは交通違反などの取り締まりもあって、フレンドリーに接してもらうような相手ではなかったので」と苦笑する。
畑を借り、家庭菜園をすることで、自分で農作物を作る喜びも感じたという。「丹波篠山は食べ物がおいしい。特に米は、冷えたおにぎりでもおいしくて驚いた」
もともと人生設計の中に「家を構える」という思いはなく、警察の宿舎を回っていくと考えていたが、だんだん「ここで暮らしたい」という思いが募った。知人を介して紹介してもらった土地を購入。昨年2月に新居が完成した。「子どもも転校したくなかったし、それと言葉では言い表せないけれど、ここには『何かに挑戦したくなる空気』もあった」と話す。
この時点では、まだ警察官。昨年3月末で異動となり、都市部の警察署に通う生活になった。電車での帰路、「どんどんと景色が変わっていき、丹波篠山に着くと、『帰ってきた』と感じるようになった」と言い、「ぼんやりとこのまちの中で働きたいな、と」―。
そんな折、目についたのが市の広報。職員募集の記事があった。ちょうど社会人経験者枠の年齢制限が引き上げられたタイミングで、まだ応募できた。「それほど深く考えてはいなかった」(宮本さん)が、採用試験を受けたところ合格。公務員から公務員へと転職した。
宮本さんは、「警察官は大変なこともあったけれど、困っている人を助けて感謝してもらえることにやりがいがあった。それは市の職員も同じ。警察で得た経験も生かしていければ」と前を向く。
自宅の敷地内で黒豆を栽培するほか、生産組合に入り、米も作る。地域の行事や会合にも参加し、すっかり住民になった。
姫路市出身の恵さんは、「都会の慌ただしい生活と違い、風が気持ちいい日は家族で散歩したり、セミが鳴き始めると捕りに行ったり。のびのびと四季や自然を感じつつ、一日一日を楽しく過ごしていけたら」とほほ笑む。
ちなみにヤギのロイは、大変な地域の草刈り要員として、「貢献できるのでは」と飼ったものの、出動は1回だけ。宮本さんは、「ぜひロイも使ってもらいたい」と笑顔で話している。



























