日展会員が貸しギャラリー 彫刻家の吉居寛子さん 帰省し制作の場移す

2025.11.15
丹波市地域地域観光

円通寺そばに開いた「ぎゃらりー寛」で開所記念作品展を開いている吉居寛子さん=兵庫県丹波市氷上町御油で

日展会員、日本彫刻会会員の彫刻家、吉居寛子さん(64)が、紅葉の名所、兵庫県丹波市氷上町御油の円通寺のそばに貸しギャラリー「ぎゃらりー寛」を開いた。オープンを記念し30日まで、今春の日彫展で賞を得た座像をはじめ、自身の作品32点を展示。等身大の立像や素焼きのレリーフなどを並べている。「お寺へのお参りと合わせ、立ち寄ってもらえれば」と話している。

元滋賀県立高校美術教師。兵庫県立柏原高校卒業まで、同市氷上町御油の実家で過ごし、滋賀大学教育学部進学を機に故郷を離れ、長く同県長浜市で暮らした。昨夏、母の初盆で帰省した際、同寺近くに好物件があるのを知り、即購入。秋に帰郷し、作品制作と並行して開所準備を進めた。

ギャラリーは築50年ほどの母屋1階の4つ間(8畳強、4畳半、6畳、8畳と縁側)。一部改装したほか、照明を交換したり、ワイヤーフックを設置したりし、立体に限らず、絵画や写真、陶芸の展示などにも使えるようにした。

母屋がギャラリー、倉庫が制作の場

「出展を頼んでいた写真家が多忙で、手前みそで避けたかったんだけど」と、開所記念が自作の作品展に。目玉は、今春の日彫展で、最高賞に次ぐ三賞の一つ「会員賞」を受賞した、姪がモデルの座像「星降る空に」(石こう、高さ115センチ×幅55センチ×奥行き70センチ)。帰郷後制作した最初の作品で高評価。幸先良い再スタートを切った。

仕事と子育てが多忙で1990年代に制作ペースを落とした以外は、1980年代からコンスタントに制作を続けている。2004年に最初の日展特選、日彫展「日彫展賞」をダブル受賞。21年に両展覧会で審査員を務めるなどした。

20年に植野記念美術館で「父子二人展」を開いた際、直接知り合いでない人が見に来てくれたり、自身の知らない所で知り合い同士がつながっていたり、作家活動をしている人と知り合ったりし、「美術で交流ができる場がつくれたら」の思いを抱いた。

子育てで思うように制作ができなかった90年代、年1回の柏原高校美術部OB会の美術展「Maybe展」出展が支えになった。「落ち込む日もあった。『Maybe展』に随分と励まされた」と振り返る。

物件が見つかったのも故郷との縁。地元出身のよしみで、近所の人がとてもよくしてくれて、会期中の16、23日(いずれも日曜)に茶席を設けてくれる。「紅葉だけでなく、青モミジもアジサイも美しい。好季節に利用してもらえれば」と話している。

営業は土、日、月曜。駐車場は同寺を利用(入山料300円)。

吉居さんは、丹波市内の柏原中、氷上中、青垣中、幸世自治振興会、柏原高、北小に作品を寄贈している。

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