兵庫県丹波篠山市内で障がい者福祉事業を展開する一般社団法人「みずほの家」が、社会の各分野で人々の安寧と幸福のために尽くした人に贈られる「社会貢献者表彰」を受けた。受賞は、重い障がいのある娘と暮らした自宅を改装して障がい者の短期入所施設を開設し、初代施設長を務めた山中泰子さん(70)=同市住吉台=の功績によるもの。山中さんは東京都でこのほど開かれた式典に出席し、主催する公益財団法人「社会貢献支援財団」の安倍昭恵会長から表彰状を受け取った。現在も利用者の“お母さん”として障がいのある人たちに寄り添い続けており、「きっと天国にいる娘も喜んでくれていると思う。娘が残してくれた思いを胸に、地域の皆さん、スタッフと共に歩んでいきたい」と話している。
同表彰は、社会に対して顕著な功績がありながらも、報われる機会が少なかった人が対象。同法人は丹波篠山市社会福祉協議会からの推薦を受け、学識経験者らの選考委員会の審査を経て、約210件の中から対象の30件に入った。
施設開設のきっかけは、最愛の娘で、重い障がいのあった瑞穂さんとの生活。瑞穂さんは生後40日でヘルペス脳炎を発症し、重度心身障がい者となった。24時間の介護や入退院を繰り返す生活。瑞穂さんの2人の兄を親戚に預けるなど、家族が離れ離れになる時期もあり、心身共に疲弊しながらも、その命を抱きしめ続けた。瑞穂さんは2009年、家族に見守られながら24歳で旅立った。
悲しみに暮れた家族だったが、瑞穂さんと過ごした経験から「同じような境遇の子や家族を支えたい。そのためには重度障がい者を受け入れる短期入所施設が必要」と2015年、夫の信彦さん(70)ら家族と共に同市北新町の自宅(当時)を改装した施設を開設。単独型で家庭の温かさが詰まった施設には利用者の笑顔があふれ、県内20市町から年間延べ3000人が訪れる場所になった。
その後、一般社団法人となり、現在は短期入所のほかにデイサービスやグループホームも運営するなど、広がりを見せている。
表彰ではこれらの功績が認められた。山中さんは、「無我夢中で始めたことで、大変な時期もあったけれど、たくさんの人に支えられた。家族やスタッフなど、みんなのおかげで頂いた」とにっこり。「瑞穂がいてくれたからこその今。これからも家族には一息つける場所、利用者には『おばあちゃんの所へ遊びに来た』というように楽しく過ごしてもらえる場所であるように頑張りたい」と話していた。
2016年に山中さんと同じ理由で「ベスト・プラウド・ファーザー賞in関西」を受賞していた信彦さんは、「支えてくれたスタッフ、そして妻や家族もたたえてもらうことが悲願だったが、9年越しにかなった」と壇上の妻を見守り、「障がいのある子どもを亡くすとその世界から離れるのが普通。その中で瑞穂がいた24年とその後のトータル40年、本当に頑張ってくれた」と感謝していた。




























