ミラノのショーで作品披露 子供服ブランド「Daughter&Son」 「天国」テーマに”ふんわり感”

2025.12.06
丹波市地域地域注目

ミラノのファッションショーで披露した作品と山口さん=兵庫県丹波市春日町多田で

子供服ブランド「Daughter&Son(ドーター・アンド・サン)」を展開する、デザイナーの山口美晴さん(40)=兵庫県丹波市=が、イタリア・ミラノのファッションウィーク期間中に開かれたショーで作品を披露した。夢だった「海外ファッションショーへの出展」を実現し、達成感とともに今後の創作活動にも力が入っている。

海外ファッションショーへの出場経験があり、同じく子ども服を制作する日本人の友人からの誘いを受け、カメラマンと共に現地へ赴いた。日本人デザイナーは友人と山口さんの2人。現地イタリアのほか、フランス、オーストリアなどから約20組が参加。レディース服の出展が多く、ジャンルも多岐にわたった。

1カ月半ほどで仕上げた100―140センチサイズの15点を披露し、うち2点は男の子の衣装で、イタリアのモデル事務所に所属する子どもたちが着用した。

ショー指定のテーマはなく、山口さんは「天国」をコンセプトに天使や雲の上のような「ふんわり感」を意識したという。白色に近い温かみのあるきなり色や黒色を基調とした麻、綿などの天然素材をメインに使用。スカートをふんわりと膨らませるためのパニエを使ったフリルスカート、胸元に大きなリボンをあしらったパンツスタイルのほか、花冠のようなカチューシャといったアクセサリーにもこだわった。

ファッションショーの様子=イタリア・ミラノで(提供)

本番は、次々と早着替えが続き、想像以上の忙しさに。想定していたモデルの登場順もばらばらになるほど慌ただしく、「うまくできんかったな」と悔しさは残ったものの、良い経験になったと前向きに捉える。オーストリアの雑誌編集者から取材の声がかかったほか、海外から販売を希望する問い合わせが多数寄せられたという。

山口さんが衣服作りをする上で理念としているのが、古くなって使われなくなったものに新しい価値を与え、再利用する「アップサイクル」。服飾の専門学校を卒業後、アパレルメーカーのデザイナーとして働く中で、大量廃棄される衣服や乱雑に扱われる現場などを目にした。自身のブランドを立ち上げて以降も、「ただでさえ(衣服が)飽和状態なのに創る意味があるのか」と物づくりへの罪悪感を抱くこともあったという。

5年ほど前から「アップサイクル」を意識し、在庫処分品や工場で廃棄寸前の生地を買い取り、すでに存在しているものを生まれ変わらせる服づくりに取り組んでいる。

ショーで披露した作品も、テーブルクロスを再利用した。また、アンティークやビンテージにもこだわる。アンティークショップで購入した、1901―10年(ビクトリア朝後期―エドワーディアン期)のブラウスを全て解体し、一から仕立て直した大作も。袖を通すこともできないほどに劣化していたが、レースや刺しゅうの美しさに引かれ、どうにかしてよみがえらせたかったという。

初の海外ショーを終え、「一つ夢がかなった」と達成感をにじませる山口さん。ミラノ行きで新たな目標が生まれた。「これからは、単独での販売イベント(ポップアップショップ)の機会をもっと増やしていきたい。自分のブランドの実力も試していきたい」と意気込んでいた。

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