人材を複数事業所でシェア 派遣業できる組合設立準備 正社員で雇って職場掛け持ち 移住希望者に安定雇用と多様性提示

2025.12.20
丹波市地域地域注目

特定地域づくり事業協同組合への参加を事業所に呼びかける発起人たち=兵庫県丹波市氷上町成松で

「田舎暮らしをしたいけれど、安定した仕事がない」と二の足を踏む人を正社員として雇い、事業所に人材派遣を行う組合の立ち上げを、兵庫県丹波市の有志が準備している。雇い入れ条件は、同市内の2つ以上の職場を掛け持ちすること。特定期間に繁忙期が集中する、不得意分野だけ力を借りたいけれど通年雇用はできないといった事業所間で人材をシェアしてもらう。正社員の身分保証をしながら多様な働き方を提示することで移住者を呼び込み、引いては地域活性につなげたい考え。

2020年に創設された総務省の「特定地域づくり事業協同組合」。一般的な組合と異なり、労働者派遣事業ができる。

例えば、1人の社員が「春は農業法人、夏は飲食業、秋冬は酒造業」や「午前中は介護事業所、午後は小売業」といった働き方をする。ITスキルに長けた人なら「A社、B社、C社で勤務する」といった具合。

人材派遣を受けたい事業所は出資し、組合員になる。組合事務局がコーディネートし、組合員間で人材を共有する。

有志でつくる組合準備委員会は、派遣される側のメリットを「組合が正職員として雇い、雇用保険、厚生年金保険に加入する。さまざまな職場を体験できる」とし、派遣を受ける側のメリットを「繁忙期の人手が確保できる、採用にかかるコストと手間がかからない。刺激を得られ、事業発展の可能性が生じる」と説明する。国と市から人件費や運営費の補助があり、組合員が同組合に支払う利用料は、民間人材派遣会社より少額で済む点もメリットという。

一方、組合で雇用できる(派遣できる)人数に限りがあり、「誰でもいいから低賃金で来てほしい」といった要望や、組合員間で繁忙期が重なった場合、希望が通らないこともある。

同準備委は「単なる便利な派遣会社ではない」と強調。「面白い人を地域に呼び込む投資、自社の事業を支える人をみんなで育てる意識を持ち、組合員になる事業所に『地域づくりの仲間』に加わってほしい」とする。

人事コンサルティング事業などを手がけるヒューマン・ルブ合同会社(同県丹波篠山市)の嫁田実社長(42)、丹波市青垣町佐治で空き家活用を通じた地域活性化に取り組むNPO法人・佐治倶楽部の出町慎代表理事(43)、丹波市の移住相談などを受託している一般社団法人・Beの中川ミミ代表理事(44)、自動車関連技術指導などを手がける一般社団法人・ATZ Magnet(愛知県刈谷市)の横田親代表理事(43)の4人で、2026年7月の組合立ち上げを目指している。

1基礎自治体に1組合のみ認められる。兵庫県内は、丹波篠山市、淡路市、香美町で組合が立ち上がっており、丹波篠山市の組合は2人雇用している。

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