築120年ほどの古民家を、 少しずつ改修して観光客の休憩所や地元の集会所として整備している福井俊幸さん (75) =篠山市曽地中。 このほど、 市内では珍しくなった茅葺 (かやぶ) き作業を、 職人の後藤榮勝 (ひでかつ) さん (72) =同市八上上=と、 福井さんのいとこの井関司さん (65) =曽地中=とともに行った。
一昨年前から15年ぶりにかやを順番に葺き替えている。 福井さんは自分でかやを刈ったり、 市内の知人にかやを譲ってもらったりして保存。 ある程度たまったら、 茅葺きに使っている。 福井さんと井関さんがかやを運ぶなどの手伝いを担当。 茅葺き職人の後藤さんが手掛けている。 今回で屋根の大半を葺き替えたことになり、 あとは屋根頂部の棟部分を残すだけとなった。
屋根の水平に設置した丸い棒を足場にして、 ひさし近くから棟に向かってかやを葺いていく。 長さ約1・2メートルと約2・5メートルのかやを交互に5層ほど敷き、 「がんい」 と言われる道具で抑え、 竹で留めていく。 今回は80束のかやを使用した。 「茅葺きは夏は涼しく、 冬は温かい。 一番合理的な屋根」 という後藤さん。 日向のかやは20年ほど、 日陰のかやは10年ほどもつという。
この古民家は、 祖父の代に水車小屋として建てられた。 米をつく杵が20ほどあり、 大勢の人が精米に訪れた。 父の代は住居として使用。 20年ほど前まで住んでいた。 水車小屋の道具が残っていたり、 天井にすすが付いていたりして往時の生活感が残る建物に 「思い出があるから残したい」 と左官業を引退した5年ほど前から、 天井をはずして梁を見せるほか、 板間のいろりをつくったり、 土間にいすを設けたりして少しずつ改修。 隣の野菜直売所 「元気市」 を訪れる観光客の休憩所、 地元住民の集会場として使われている。
10畳ほどのスペースの改修を残しており、 畳敷きにして完成させると、 本格的に休憩所としてオープンする計画。 福井さんは 「観光客に落ち着く、 と言われるのが何よりの励みになる。 篠山の市街地で観光を終え帰路につくまでにゆっくりと休んでもらえる休憩所にしたい」 と話している。