篠山市向井 (村雲地区) の農業、 高橋勝さん (86) が自宅横に、 陸軍将校や農協職員だった当時のゆかりの展示物を並べる 「高橋勝記念館」 と、 高橋さんの義兄で、 篠山市出身の書家、 三宅剣龍さん (95) =東京都練馬区=の作品を展示する 「三宅剣龍美術館」 とを一体化した記念館の建設を進めている。 来年4月のオープンを目指す。 高橋さんは「篠山市東部活性化の一助になる記念館になれば」と話している。
高橋さんは、 鳳鳴中学を卒業後、 軍隊の将校を養成する教育機関 「陸軍予科士官学校」 (埼玉県朝霞市) に入学。 その後、 陸軍航空士官学校で飛行機の操縦などを習った。 日本での戦況が厳しくなり、 若い将校を温存する理由で旧満州へ送られた。 戦後、 シベリアで抑留され、 劣悪な環境の中、 炭坑作業をし、 空腹や厳しい労働に耐えた。 そんな経験から、 「二度と悲しい歴史を繰り返してはならない。 次世代に思いを伝えたい」 と記念館の建設を企画した。
また、 三宅剣龍さんは、 産経国際書家名誉顧問で、 国際的に活躍する書家。 篠山市教育委員会が市内の文化向上に貢献した市民に贈る 「三宅剣龍賞」 を設けている。 三宅さんは、 高橋さんの妻、 高橋幸子さん (12月1日死去) の兄。 毎年2月の同賞の授与式の時に、 高橋さん宅を訪れている。 高橋さんは、 義兄の功績を故郷に残したいという思いもあった。
鉄筋コンクリート造の2階建て。間口12メートル、奥行き25メートル。 バリアフリー構造で、 1階に男性、 女性、 車いす用のトイレを設置。 駐車場も完備。 1階の高橋勝記念館は、 軍服や陸軍航空士官学校時代の教材などのほか、 23歳から55歳まで農協に勤めながら、 兼業農家として働いた経験から、 火鉢や行灯、 鍬、 臼などの昭和初期から使われた生活や農具、 コンバインや脱穀機などの農機具などを展示。 農業の変遷を紹介する。 2階は、 三宅さんの作品を展示するほか、 残りの展示スペースを市民グループなどに開放する。
記念館は白を基調に、 なまこ壁風に外壁をデザインし、 周りの田園風景に合うように建てられている。 高橋さんは 「市内の子どもたちが戦争や農業、 文化を学ぶ施設にしたい」 と言い、 4月から再開館する篠山チルドレンズミュージアムや、 ハートピアセンターでJAが運営する 「東部特産館」、 国重要伝統的建造物群保存地区に選定が決まっている福住地区などとの連携を模索している。
記念館は月曜日以外の開館を予定。 入場者を受け付けるボランティアの事務員、 2階の公開スペースに展示を希望するグループを募集している。 高橋さん (079・557・0202)。