有機、 無農薬野菜を生産する 「しのたろう農園」 (篠島太さん、 初美さん夫妻) =兵庫県丹波市氷上町三原=が、 野菜を粉にしたパウダーと、 ドライフルーツならぬドライベジタブルを商品化した。 全国展開する服飾や雑貨のセレクトショップの目に止まり、 今月から関東の店舗で試験販売され、 夏以降、 全国30以上の店舗に広がる見通し。 葉物野菜嫌いの我が子に食べさせようとする母の工夫から生まれたアイデア商品で、 加工室を作るなど、 本格生産に向けあわただしく準備に追われている。
篠島さん夫妻は2005年に氷上に越し、 野菜の少量多品目栽培をしている。
篠山市の取引先が、 初美さんの考えたパウダーと乾燥野菜を気に入り、 包装のデザインを一新して売り出したところ、 大手の目に留まった。
そのままでは売れないB級品や、 一時期に大量に収穫できた野菜を 「腐らせないように」 「無駄を出さないように」 とのもったいない精神で刻み、 乾燥させた。 トマト、 オクラ、 ズッキーニ、 大根などを商品化。 乾燥させることで、 味が濃縮され、 甘みが増すという。
乾燥野菜を作っている時に、 刻んでもペーストにしても葉物野菜を口にしない子どものために、 知恵を絞り、 野菜を粉にすることを思いついた。 小松菜を粉にし、 みそ汁に入れたり、 ふりかけにしたところ、 抵抗感なく受け入れられたという。
以後、 ピーマン、 パプリカ、 バジル、 ニンジン、 ジャガイモ、 ムラサキサツマイモ、 ショウガ、 ウコン、 カボチャ、 ニンジンの葉、 セロリ、 キャベツなど、 できそうなものは手当たり次第乾燥させ、 家庭用のミルで粉にした。 色とりどりの粉ができ、 発色の良いものは、 パンや製菓の材料に買われていった。
当初、 篠島さんがパソコンで自作した簡単なパッケージで販売していたが、 篠山市の業者が透明の小瓶に粉を入れて売ることを発案。 色とりどりの野菜の粉が並ぶと、 クレヨンのような美しさがあり、 見た目のかわいらしさと実用的な用途があいまって、 人気が出た。
乾燥させることで10分の1から20分の1に体積が減る。 手間と電気代を考えると、 粉にすることで、 生で売るより利益が落ちるものもあるという。
篠島さんは、 「予想外の展開で、 加工室も急きょ作った。 パッケージの大切さが良く分かった」 と笑い、 初美さんは、 「農家の子どもが野菜を食べないでどうするの、 と怒っていたけれど、 子どもがいいきっかけをくれた」 と言い、 「メイド・イン丹波を広く発信できれば」 と瞳を輝かせた。