朱色の霧島ツツジが境内を埋め尽くす一の宮神社 (兵庫県丹波市氷上町上成松) に黄金週間中、 大型観光バスが多数押し寄せ、 観光客でごったがえした。 これまでは開花期間中に数台だったが、 今年は1日に6―7台が訪れ、 地元住民によると、 ゴールデンウイークだけで少なくとも50台以上がやって来たという。 名所として知名度が上がることを喜ぶ半面、 トイレと駐車場の確保という課題から、 「来年以降受け入れできるのか」 との声が上がっている。
阪神地区を出発地とする複数の旅行社の日帰りツアーに組み込まれたことが、 来場者急増の理由。 九尺フジで知られる白毫寺 (丹波市市島町) とセットで昼食にタケノコを味わうツアーでは、 同神社を午前中に訪れる。 ヤマサ蒲鉾 (姫路市) の芝ザクラ、 「天空の城」 と呼ばれる竹田城 (朝来市) などを巡るツアーでは、 篠山市での夕食前に組み込まれた。 バス3―4台の時間が重なることもあり、 広くない境内は歩くのに苦労するほど人があふれかえったという。
ツアーに組み込まれたことを知らなかった地元の人たちは、 急な観光客増に驚くばかり。 若手でつくる 「一の宮会」 が祭りを開いた4月28日は出店や交通整理の人員もあったが、 それ以外は無人。 駐車料も拝観料も無料のため、 地元で対応する人はなかった。 急きょ有志が販売したタケノコやせんべいは完売。 「炊き込みご飯はないのか」 「草もちはないのか」 といった声もあったという。
神社にトイレがなく、 近くの人が頼まれて一部貸した。 2000平方メートル以上ある広大な駐車場も、 自治会の所有地でない売り地で、 来年も使用できる保障はないという。 「駐車場がなくなれば、 一般の観光客も来なくなるだろう」 「かと言って、 1週間ほどのために自治会で買おうという話も持ち合わないだろう」 などと、 地元の人たちは、 売り出し始めたばかりの名所の先行きを案じている。