兵庫県丹波市青垣町内の山中で、 県レッドデータブックBランクの希少植物、 クリンソウの群生が見つかり5月21日、 専門家が現地調査を行った。 これまでに確認されていた谷筋の群生地2カ所に加え、 新たに1カ所が見つかった。 3カ所合計で約2200株を確認。 紅紫色の花は、 ちょうど満開の見ごろを迎えている。
青垣いきものふれあいの里運営委員長の足立勲さん、 同施設友の会会長の芦田勲さん、 丹波自然友の会会長の長井克己さんの3人が調査。 第1、 第2群生地は、 林道に沿って300メートルほどと近く、 約2000平方メートルの中に約2100株ある。
ゴールデンウイーク中に、 地元の人らと調査を進めるなかで、 群生地の近くで自生していたクリンソウの種を持ち帰り、 自宅でポット苗で育て群生地に移植した自然愛好家の存在がわかった。 この男性によると、 2009年ごろに10株を植えたという。 植えた翌年に20株程度に増えたのを確認したきり見に行っておらず、 足立さんに誘われて久々に現地に赴いたところ、 「ものすごく増えていて驚いた」 という。
足立さんらの調査で、 男性が植えた場所と同じ谷筋のさらに上流でも花が見つかった。 足立さんは、 10株が3―4年で200倍に増えたとは考えにくく、 移植分と自生との混在で大きな群生地になったと見ている。
21日、 同じ山で一昨年に芦田さんが見かけた場所を調査。 第1、 第2群生地とは600メートルほど離れた別の谷で、 125株を確認した。 愛好家の男性が2008年ごろに種を採取したクリンソウが生えていた場所から、 急こう配の山を数十メートル登った谷筋で、 約20平方メートルに密集して咲いている。
足立さんは、 「風が種を運び、 環境の良い所で育つので、 自生で拡大したのか、 愛護活動の成果なのか、 区別がつかない。 同じ山のあちこちで花が見つかっており、 断定はできないが、 もともとは自生していたと考えられる。 詳しく調べれば、 さらに多くの群生地が見つかる可能性がある」 と見ている。 調査結果は地元に伝える。 「これだけ大きな群生地は珍しく、 村おこしの材料になる。 地元で保全体制を整えて一般公開し、 多くの人を楽しませてもらえれば」 と期待を寄せている。
【クリンソウ】山地の湿地に生えるサクラソウ科の多年草。 5―6月に大きな根性葉から高さ30―50センチほどの花茎を出し、 約2・5センチの紅紫色の花を数層に輪生して咲かせる様子が、 五重塔の九輪に似ていることから、 この名がついた。 篠山市の多紀連山では2007年6月、 約4100平方メートルにも及ぶ大群落が発見され、 「多紀連山のクリンソウを守る会」 が設立されている。 丹波市では、 市島町鴨庄地区の妙高山に群生地があり、 昨年 「妙高山のクリンソウを守る会」 が設立された。