原子力発電所の事故に備え、 災害時にさまざまな活動を行う篠山市は、 職員を対象にした防災研修をスタートさせた。 今年度中に全職員が原子力災害の概要や、 被曝時に効果を発揮する 「安定ヨウ素剤」 の使用法などを学ぶ。 6月25日には初回となる研修会が篠山市民センターで開かれ、 同市原子力災害検討委員会メンバーでフリージャーナリストの守田敏也さんが講演。 約100人の職員を前に、 「防災のために最も効果的なのは事前学習と避難訓練。 原発事故を起こりうる災害として日ごろから備えて」 と訴えた。
関西電力・大飯原発 (福井県) から50キロ圏内に位置する篠山市。 今年4月、 同原発で福島原発と同レベルの事故が発生した場合、 1歳児の甲状腺被ばく線量が1週間で、 国際基準の3倍以上になる予測が発表された。
福島原発事故を受け、 昨年から同検討委員会を立ち上げ、 事故時の対応策などを検討する中、 実際に初期対応に当たる市の職員や医療関係者などに知識を深めてもらおうと研修会を企画した。
原発事故や原子力防災などについて精力的に取材を行っている守田さんは、 「福島原発事故の教訓を篠山市の原子力防災へ」 と題して講演。 災害時には、 事実を認めず、 事態は正常と考えてしまう 「正常性バイアス」 (バイアス=先入観、 偏見の意)、 周りの行動に合わせてしまう 「同調性バイアス」、 パニックを恐れて危険を伝えない 「パニック過大評価バイアス」 があるなどと、 防災心理学を紹介した。
その上で、 「放射能は目に見えないので、 特に過小に扱ってしまい、 さまざまなバイアスのせいで被害を大きくしてしまう。 放射能被害の対策は基本的に逃げるが勝ちだが、 行政は起こりうる事態の想定の中から実現可能なことから対処を準備しておくことが求められる」 と呼びかけ、 「免疫力を高める上での、 安全な食品が求められる。 農業のまち篠山の役割は大きい」 とした。
植村富明・市総務部長は、 「原子力の問題は、 私たちの無知が不安を生んでいる。 公務員は自らの命を守り、 市民のみなさんを安全に導いていく使命がある。 研修会を通し、 あらためて真剣に考えていければ」 と話していた。