「秋の七草」 が、 「三草」 「四草」 に―。 万葉歌人、 山上憶良が詠んだ 「秋の七草」。 野辺のありふれた草花が、 丹波地域では、 今や 「珍しい植物」 になっている。 「秋の七草」 は、 無病息災を祈願して食べる 「春の七草」 とは違い、 姿の美しさを眺めて楽しむもの。 「ハギ」 「ススキ」 「クズ」 「カワラナデシコ」 「オミナエシ」 「フジバカマ」 「キキョウ」 ―の7種のうち、 環境省の絶滅危惧類 (VU) にキキョウが、 準絶滅危惧 (NT) にフジバカマが指定されている。 丹波地域では、 カワラナデシコとオミナエシも減少の一途をたどっている。
青垣いきものふれあいの里 (丹波市青垣町山垣) で開かれている 「秋の山野草展」。 七草がそろって展示されているが、 今回の展示に合わせ野生から採取したのは、 ススキとクズ、 オミナエシの3種。 他は、 以前から同施設で栽培しているものと、 寄付されたもの。
同施設の松井久信施設長は、 「オミナエシは、 地元の山垣にはある。 カワラナデシコも施設の敷地内にはあるが、 どちらも、 他ではあまり見ない。 フジバカマはとんと見ない」 と言い、 丹波自然友の会の長井克己会長(青垣町東芦田)は、 「先日、 春日でカワラナデシコを見かけた。 フジバカマは全然見かけない。 里山が失われ、 七草も減ったのでは」 と見る。
「篠山自然の会」 副代表の谷口次男さん(篠山市西新町)は、 「キキョウやオミナエシは、 盆花などに利用されるので、 庭先で栽培されていることが多いが、 野生種は今田町などでわずかに見られるだけ」 と話す。
カワラナデシコは、 「花の時期になると、 名前の通り、 河原一面にナデシコが咲き乱れていた」 と幼少の頃の記憶を思い返しつつ、 「今では点々と局所的に見られるだけ」 と話す。
フジバカマにいたっては、 篠山城跡の周辺で、 わずか1カ所確認しているだけという。
人と自然の博物館の植物生態学者、 橋本佳延・主任研究員は、 「これら4種はいずれも、 草地の環境を生育地としている」 と説明。 「以前なら草地は、 かやぶきの屋根材や肥料として利用するため、 人が草刈りや火入れなどによって管理し、 良好な生育環境が維持されていた。
しかし、 高度経済成長に伴うライフスタイルの変化で、 草地はその価値を失い、 放置されるようになった。 また、 宅地や道路開発などで、 生息地が消えたりしたことなどが主な減少の理由」 と話している。