「コヤマロール」で知られ、フランス・パリのチョコレートコンクールで8年連続で最高位を獲得している洋菓子店「パティシエ エス コヤマ」(兵庫県三田市)代表の小山進さん(54)がこのほど、同県篠山市の今田中学校の生徒らに、「パティシエがつくっているのは、ケーキだけではない―世の中の仕事はすべて“モノづくり”」と題して講演した。小山さんは「何か一つでいいから得意なことを磨いて。夢を持つのは大事だが、実現させるために目標を持つことが何よりも重要。どんな状況に置かれてもその中で楽しみ方を見つける。そして、どんなことでも自分のことと思って参加して」と熱く語った。要旨をまとめた。
なんでも楽しくやる
ケーキ屋になろうと思ったのは高校2年の時。それまでにもグラフィックデザイナー、教師、陶芸家、歯医者などになりたいと思っていた。今でもロックミュージシャンにはなりたい。お菓子作りだけがしたかったわけではなく、なんにもないところ、一から形にしていくのが好きだった。
まずは何か1個、得意技を磨いて。そして、好きなことを大好きになって。得意なことをもっと得意になることが大事。僕の得意技は、どのような状況の中でも、なんでも楽しくやる、楽しくしてしまうということだ。
夢を持て、と人は言う。しかし夢より大事なのは目標だ。大人は子どもに夢を教えるのもいいが、夢の達成の仕方を教えてあげてほしい。
大きな夢を持っていても、その夢を実現するために今日、何をしたらいいのか、わからないと意味がない。夢の実現に向けて思い立ったら、この先1年間の計画、毎月、毎週の目標を実現させていく。
予定通りにいかなかったら修正する。常にいま何をしたらいいのか、やるべきことは、と考え、夢と直結していることを感じながら進んでいくこと。
得意技を磨くやり方を先生や両親と考えてみてほしい。一人で「やるぞ」と約束したって続かない。自分の心の中で約束したことを他人に発表しないとだめ。目標達成の進捗具合を見せていかないといけない。それには大人の協力が必要だ。大人は達成したらほめてあげてほしい。
まずは姿勢を超一流に
19歳でケーキ屋に入った。最初は何もできないので洗い物ばかりさせられる。普通は「洗い物ばかり嫌だなあ」と感じるが、僕は「洗い物選手権大会」を頭の中で開催した。
山ほどある洗い物を楽しくするコツだ。洗い物をしながら食器がきれいになっていく様子を頭の中で実況する。「何分以内に洗い物を終わらす」と時間を決めてやるので時間内に終わると達成感がある。
いち早く汚れを落とすため熱湯で洗った。どんなことに対しても、「自分がやるんだったら、これくらいでないと気が済まない」と常にレベルを高く持った。洗い物作業ですらそんな風にやっていたので、やがて「あいつに他の事をまかせてもやりよるで」と期待されるようになった。
要はその状況をいかに楽しむかだ。そして取り組む姿勢が一流であるかどうかだ。決して難しいことではない。姿勢を超一流にするのは早ければ早いほどいいので、まず取り組んでほしい。
そして、なんでもかんでも楽しくする。どのようなことでも自分のことと思って参加して。僕の話を聞いて、何か1個でも始めてみようかなあと思ってください。子どもも、そして大人も。