花粉から地球を解明
千葉県立中央博物館 研究員 奥田昌明さん (千葉市在住)
(おくだ・まさあき) 1970年 (昭和45年) 山南町生まれ。 柏原高校、 京都大学理学部卒。 同修士、 博士課程修了。 98年、 現職に。 生態学研究科所属。 理学博士。
花粉の観察を通して、 地球環境の変化の仕組みを解明する研究に取り組む。 花粉の化石を調べ、 地球環境の過去の推移から未来の変化を類推する。 「最近は1日平均5、 6時間ぐらいですが、 博士論文を書いていたころは10時間も顕微鏡を覗いていました」。 顕微鏡でひと目見れば何の花粉か、 200から300種類が判別できるそうだ。
地球の温暖化が世界的な関心の的となっている。 「ヨーロッパはもともと熱心で研究レベルが高い。 日本はというと、 京都議定書批准以来、 予算が増えてレベルも上がってきたように思います」。 100年後の気温上昇を世界の7つの研究機関が予測しているが、 その幅は広く、 最大五・五度から最小1.5度。 破局的な事態を強調していたずらに不安をあおるような本が多いのには疑問を投げかける。
「それでも気を緩めず、 二酸化炭素の削減努力は必要です。 私たちが不相応に地球の資源を浪費してきたことから起きている、 エネルギー問題、 森林破壊、 大気汚染、 ごみ問題などすべてにかかわることですから」
地味で孤独な仕事と思われるが、 「おもしろいですよ。 オリンピックを目指しているスポーツ選手のようなものでしょうか。 4年に一度の晴れ舞台に備え、 確実にメニューをこなしていくような毎日」 がとても充実しているそうだ。
大学浪人中に成績のランクで進学先を決め、 花粉の研究も気がついたらライフテーマになっていたという。 いつの世でも与えられた環境で地道に努力することは大切だと思うし、 「最近のフリーターのように自分がしたいことは何かと自分探しばかりしていても答えが見つかるものではないだろう」 と思うそうだ。
週末も博物館の研究室にこもって仕事をすることがある。 「いつ電話しても留守で、 携帯電話もかからへん」 と、 丹波の家族が嘆いているほど研究に没頭の日々。 「丹波では誰も気に留めないような雑草でも、 都会の人たちにはめずらしく大切のようで、 ちょっと違和感を感じることはありますねえ」。 都会生活になれきれないようだ。
(上 高子)