京都文教短大教授 安本義正さん

2003.05.18
たんばのひと

「赤米」と「音楽療法」
京都文教短大教授 安本義正さん  (京都市在住)
 
(やすもと・よしまさ) 1943年 (昭和18年) 成松町 (現氷上町) 生まれ。 柏原高2年から兵庫高に転入。 大阪大工学部応用物理学科卒、 同大学院博士課程中退。 同大産業科学研究所を経て83年、 京都文教短大へ。
 
 児童教育学科で理科教育と生涯教育に携わっているが、 型通りの指導、 研究でなく、 「赤米」、 「音楽療法」 の専門家としても広く知られる。
 赤い穂が波打つ田に魅せられたのがきっかけで、 十数年前から付属の小学校で赤米の栽培を始め、 環境学習の中に取り入れてきた。 タイ、 ネパール、 中国などの産地まで足を伸ばし、 多くの本を出す。
 高齢者に唱歌や流行歌などを歌ってもらったり、 タンバリン、 カスタネットなどを使って病気の治療や予防、 健康維持を図るのが音楽療法。 声を出す、 身体を動かす、 リズムをとる、 きちんと歩くなどの基本を取り入れたプログラムが組まれている。 リズムに乗って歌うことにより、 空気の出入り量が増え、 肺の機能がよくなって、 自律神経が調整できるという。
 「初めは反応の鈍かった人が、 愛唱していた曲が流れて来ると、 別人のように活き活きとした表情になるんです」。 実践活動と、 全国に500人いる音楽療法学会認定の療法士の養成に取り組む一方、 医学の専門家と共同で、 効果の面での実証研究をしている。
 安本さんのもともとの専門は音響科学。 「音には高低、 強弱、 時間間隔などを総合して、 『ほどよいゆらぎ』のものが心地よく、 いやしとなる」 といい、 モーツァルトやビートルズ、 また美空ひばりや宇多田ヒカルなどはいずれもこの条件を満たしているそうだ。
 京都府下の各地の公民館などにも実践指導に。 「自治体はただ高齢者にサービスするのでなく、 高齢者に健康を維持してもらって、 その人材を地域のために活用することを考えてほしい」 と話す。
 最近は、 水琴窟の音色の研究も手がけ、 「水滴の奏でる小宇宙」 (仮題) というCDを監修。 8月に発売される予定。
 高校半ばまでだったが、 「自分を育ててくれた丹波」への愛着は強く、同窓会に出席するほか、 中学時代の恩師を訪ねる。 「先日の同窓会で、お互い定年になったら、 これまで培ってきたものを出し合って、 ふるさとの役に立つことをしようという話が出ましてね」 と、 にっこり笑った。
(外野英吉)

関連記事