兵庫県篠山市の山際の耕作放棄地で、ニホンヒキガエルの卵塊が確認された。わずかなくぼみの水たまりに、ひも状の卵塊がひしめき合うように産み付けられており、春の訪れを告げている。
研究者によると、卵塊は5メートル以上にもなるという。1つの卵塊の中には直径2・5ミリほどの黒っぽい小さな卵が無数に詰まっており、1週間後のふ化を静かに待っている。
産卵場の近くには、繁殖に参加していたと思われる数匹がうろつく姿もあった。
ニホンヒキガエルは大きさが8―18センチぐらいと、在来のカエルの中では最大級。昆虫やミミズなどを食べる。目の後方に、白色の有毒物質を出す耳腺を持つ。跳躍力が弱いため、移動は“歩き”が多い。
篠山市内では2―3月、水たまりや田んぼなどの止水で産卵。繁殖場にはメスの数倍の数のオスが集まるため、しばしば「カエル合戦」と呼ばれる激しいメスの奪い合いが繰り広げられる。産卵後は「春眠」をし、本格的な春の到来を待つ。
地元、篠山東雲高校の理科教諭で、日本爬虫両棲類学会会員でもある田井彰人さん(50)によると、産卵場所となる湿地が減少し、コンクリート製の水路に行く手を阻まれることなどから、個体数が減少しているという。
県レッドデータブックのCランクに指定されている。