兵庫県篠山市は、アライグマの行動と生態を知ることで効果的な獣害対策につなげていこうとこのほど、研修会を開いた。市は、有害鳥獣捕獲と外来生物法の防除計画に基づく捕獲を柱として、アライグマの被害対策に取り組んでおり、捕獲従事者証を取得した市民が年間約130頭、猟友会が約150頭を捕獲しているが、農業被害額は年間約150万円にのぼり依然として被害は減っていない。そこで改めてアライグマについて学ぶため、埼玉県農業技術研究センター職員で、捕獲実績をあげている古谷益朗さんを講師に迎え、生態や捕獲ノウハウを聴いた。要旨をまとめた。
アライグマは北米原産で、2005年に特定外来生物に指定された。日本では1960年代に野外での生息を、77年に繁殖を確認した。この年に放映が始まったテレビアニメによって人気となり、ペットとして大量に輸入された。しかし、気性が荒く、アニメのようなかわいい動物ではないことから、多くが野に放たれ、悲劇が始まった。
成獣の大きさは、尾を含めると80センチほどで、体重は平均で5キロぐらい。夜行性と思われがちだが昼間も活動する。
出産は4月中旬がピーク。平均4頭産み、秋遅くまで母親と行動を共にするため、この時期の被害は大きい。成長が非常に早く、メスは1年後には繁殖できる体になる。
木登りが得意だが、ネコのように爪を引っ掛けて登るのではなく、人の手のように使える前肢を巧みに使う。このため木だけではなくパイプなどさまざまなものに対応でき、物をつかんだり、扉を開けたりもできるため、あらゆる場所から侵入する。
雑食性だが、特に甘いものが好きで、ブドウやトウモロコシ、スイカなど糖度の高い作物が狙われる。スイカには直径5―6センチの穴を開け、前肢を使ってくり抜くようにして中身だけを食べる。
被害対策を効果的に進めるには「食」「住」「体」への対応が基本となる。
「食」は、増加を手助けしているえさを与えないということ。人里には「食べても怒られないえさ」がある。放置された柿や廃棄農作物、生ごみ、墓に供えた菓子などだ。「食べ物があるから動物が来る。食べ物があるから動物が増える」という当たり前のことを再認識してほしい。
「住」は、安心して休息、繁殖できる場所をなくすこと。特に神社仏閣や日本家屋は風通しを良くするためのすき間が多くあり、ここが狙われる。高さ6センチのすき間があれば侵入可能だ。ねぐらは必ず被害発生場所から近いところにある。優先順位はえさと休息場所を断つことだ。
「体」は、効率的な捕獲を行うこと。出産・授乳期の4―5月は、メスが必死でえさを探しまわる時期なので、この時期の捕獲が効果的。アライグマは仲間が捕まっても、3日間ぐらいはその場所をうろつくので、捕獲器を複数設置することが重要だ。捕り残すと罠にかかりにくい個体をつくってしまうので注意。けもの道の上には置かず、その脇に設置する。
捕獲に使用するえさはキャラメルコーンが一番。次いでドーナツや揚げパン。ちくわやドッグフードだと、ネコが捕獲されてしまう。いずれも地面に撒いたりせず、水切りネットに入れて檻の上面に結んで取り付けること。