兵庫県篠山市は18日、機動力や鳴き声を生かして、サルによる農作物の被害から農地を守る追い払い犬「モンキードッグ」として新たに2頭を認定した。同制度は県が認定するものだが、現在、実働しているのは篠山市のみ。プロのトレーナーの指導を受け、主人や地域の人たちが育てた野菜を守るため、総勢19頭が”犬猿の仲”を生かして奮闘する。
A―E群まで県内最多5つのサルの群れがいる同市のモンキードッグ制度は2011年からスタート。県内で過去に制度があったまちではサルの出没現場に駆け付けるタイプもあったが、篠山市ではサル被害がある集落で暮らす犬と飼い主が、自分たちの農地を守るスタイルを取っている。
モンキードッグの最大の特色は、厳しい訓練を経て認定されることでリードを外すことができ、集落にやってくるサルの間近まで行って追い払うことができることだ。
制度に申し込んだ飼い主と犬は、トレーナーや県の職員がその適性をテスト。獣の皮のにおいをかがせて関心を持つかどうかや、人をかむ危険性がないかを見たうえで、「適正あり」とされた場合は訓練が始まる。
待て、伏せなどのほか、犬の側を歩く脚側歩行、呼び戻しを身に付け、飼い主の命令に従うよう特訓する。クリアすれば、実際に山に入り、リードを外して呼び戻すことができるかのテストも行われる。
犬種は柴犬やミックスからシュナウザー、ゴールデンレトリーバー、屋久島犬に甲斐犬などとさまざま。市によると、モンキードッグがいる集落にサルが出没しなくなったケースもあるといい、近年は、サルの接近をタイムリーに知らせるメールと併用することで、さらに有効な対策を取ることができるようになった。
今回認定されたのは、ミックスの「きなこ」(メス、1歳)とビーグルの「サツマ」(オス、5歳)。
きなこの飼い主、岡本節美さん(64)=同市菅=宅の野菜もサルに荒らされたことがある。「きなこをもらってきたばかりのころに、散歩していたら裏山の檻にサルがひっかかっていた。その際に市の職員さんからスカウトされました」と笑う。「サルが来たら分かるようになっているらしく、役に立ってくれれば」と話す。
サツマの飼い主で、農家の細見敏之さん(63)=同市本郷=は、「稲や小豆、黒豆が被害に遭った。もともと猟犬にしようともらい受けた犬。訓練は大変だったが、犬との信頼関係ができた。農地を守るために、まずは追い払いをしてみたい。すでにシカには敏感に反応しており、吠えまくっています」と話していた。