自閉症や発達障がいのある人の暮らしを支援するグッズを開発、販売している兵庫県丹波篠山市味間奥の株式会社「おめめどう」(奥平綾子社長)が設立15周年を迎えた。視覚に訴えて意思疎通をスムーズにするカレンダーやメモ帳などのグッズを全国各地に届けてきた同社。安価なグッズが成果を上げており、近年は非常時の障がい者支援にも力を発揮するとして注目され、ここ5年で注文が倍増しているという。
1995年、当時3歳だった奥平社長(56)の次男が自閉症と診断された。「言って聞かせるよりも視覚に訴える方が理解できる」とする療育方法があることを知ったのをきっかけに、メモカードなどを自作するようになった。
カードを使い、次男とのコミュニケーションがスムーズにでき始めたことから同じ症状の子を持つ親の集まりなどで話すようになったが、「奥平さんは絵が描けるから」「熱心やから」と、広がらなかった。心が折れそうになっていた時、「ボランティアでやるからや。『してあげたのに』という気持ちがでる」という、今は亡き父の言葉に一念発起し、2004年、起業した。
7曜日式のカレンダーが理解できない子どものために、横一列に日付を並べた「巻物カレンダー」が商品化第1号。「用事がある日まであと何日」という時間軸が理解できるようになるという。
今ではコミュニケーションメモ帳、書籍類など、扱う商品は約100アイテムで、価格は200―3000円程度。
次男の思春期を経験し、親離れの難しさ、年齢を尊重したコミュニケーションの大切さという新たな気付きもあった。家計にも優しいグッズの効果に喜びの声をあげるユーザーも増えた。
東日本大震災以降は、障がい者のコミュニケーションツールとして、ライフラインのない状況下でも使える点が注目されるなどして、それまで2500人ほどだったユーザーが急増。現在、約5000人が同社のグッズを使用している。最近では障がい者だけでなく、認知症の人にも使われている。
奥平さんは、「コストパフォーマンスがよいこと、社会事情にフィットしたことが、ニーズ増につながっているのではないか」と話す。「地方で何もない丹波篠山だからこそ、自分で考え、協力してくれる同級生もいた。15年続いたのは奇跡のよう」と話している。