兵庫県丹波篠山市畑地区の「みたけの里づくり協議会」が、同地区内を流れる「畑川」の今昔を比較しながら、川と人との関係を考えるマップを制作した。昭和と平成の空中写真を配し、圃場整備によって河川が改修され、どのように変化したかや、川にすむ魚の種類を掲載。同協議会は、「昔は身近だった川が、今では遠いものになりつつある。マップを通し、川の価値を見直すきっかけになれば」と話している。
A4判8ページの観音折り。河川改修前の昭和24年と、平成17年の航空写真を並べて配置した。
昭和期の写真を見ると、川が大きく蛇行し、小さな田んぼが広がっている一方、平成に入ると、川が直線的になり、同じような大きさの田んぼが整然と並ぶ。
昭和の地図上には住民の証言などから「水泳場」や「水車小屋」などを、平成には「取水堰」や「落差工」を記し、河川の変遷を通して時代の移り変わりを紹介した。
また、地元の城北畑小学校の児童たちや市、高校生による水生生物調査の結果や、地元住民の声を基に、昭和期と現在で畑川に生息する魚の種類も掲載。昭和期に32種類いた魚が、現在では15種類に減り、オヤニラミやカワバタモロコなどの絶滅危惧種がいなくなるなど、河川改修で治水・利水環境が向上する裏側で多くの魚たちがすみ場を失った現実も伝えた。
同協議会は、市が畑川をモデル河川として「ふるさとの川再生事業」で魚道整備を検討していることに合わせて、「じゃことり(魚取り)をして遊んだ昔の畑川の思い出を形に残そう」とマップ制作を計画。ワークショップを開き、昔の地図や写真をもとに記憶をたどったり、川の環境や生きもの、生活とのかかわりを調べた。
同協議会の畑基樹会長(68)は、「調査に参加した子どもたちよりも、大人たちのほうが昔を思い出して楽しみました」と笑い、「昔は各集落ごとに保護者が作ってくれた水泳場があるなど、”遊び”と言えば、川か山だった。マップができたことで、少しでも昔の川に近づくきっかけになれば」と話している。