兵庫県篠山市黒岡の国重要文化財、春日神社能舞台で13日、「第46回篠山春日能」(篠山能実行委員会・篠山市主催)開かれた。満開の桜と人間国宝の能楽師・大槻文藏さんらの所作に、来場者は幽玄な能の世界に引き込まれていた。
能「俊寛(しゅんかん)」を大槻さん、狂言「二九十八(にくじゅうはち)」を茂山千三郎さん、能「海士(あま)」を観世銕之丞さんが演じた。
俊寛は平家全盛の平安末期が舞台。都の高僧だった俊寛は、平家打倒の陰謀を企てた罪により、鬼界ヶ島に流された。しばらくして高倉天皇の中宮、徳子の安産祈願のため大赦があり、使者が島を訪れる。
俊寛は仲間とともに水を酒と見立てて都での過ぎし日々をしのびながら、現在の境遇を嘆く。そこへ使者が現れ、大赦の朗報をもたらすが、赦免状には俊寛の名前だけがなく、仲間の乗る船にすがりつくが、無情にも打ち捨てられる。
大槻さんが独特の所作で俊寛の悲しみを表現。時折、舞い散る桜吹雪が舞台を染め、会場に集まった人々は息を呑みながら、神妙な面持ちで舞台を見守っていた。