1989年に始まった平成の時代もあとわずか。87年に宮内庁に入庁し、89年から5年ほど勤めていた京都御苑の大宮御所で天皇、皇后両陛下の庭のご散策の案内や、テニスの相手を務めた谷垣孝實さん(73)=兵庫県丹波市山南町=に両陛下との思い出を聞いた。
「最初は緊張」も両陛下は職員気遣う
大宮御所に両陛下がご滞在される時に仙洞御所の庭のご散策の案内や世話係を務めました。毎年1月に行われる皇居での歌会始の儀で歌がうまく作れるようにと毎年、前年の12月に仙洞御所の庭に来られました。庭をご散策された後、万葉集の歌人、柿本人麻呂をまつった仙洞御所内の柿本社に参られていました。
庭では京都の四季の美しさを話されたり、植物の名前や京都の最近の気候などについてよくご質問がありました。最初は緊張しましたが、「お仕事はどうですか」などと職員を気遣われる両陛下のお心遣いもあり、段々と平常心に戻ることができました。仙洞御所の庭に池があり、庭からの景色だけでなく、池からの景色を楽しまれようと陛下御自身が舟をこがれていました。艪をこがれるのが本当にお上手でした。
陛下が後衛、皇后さまが前衛「勝ち負け関係なく」
仙洞御所内のテニスコートで陛下とのシングルスや両陛下とのダブルスをさせていただいたこともあります。私はテニスが未経験でした。両陛下とテニスができるとあって、宮内庁京都事務所のテニスクラブに入部し、練習しました。
テニスを本当に楽しまれていました。スコアをつけた場合でも必ず相手の打ちやすいところへ返球され、勝ち負け関係なしに楽しまれていました。テニスがきっかけで結ばれた両陛下の思いがプレーに出ていました。だいたい後衛が陛下で、前衛が皇后さまでした。ボールの行方に合わせ、互いにお名前を呼び合われ仲睦まじかったです。
平成の31年間、両陛下は祈りの旅をされながら、国民に寄り添い、国民の幸せを重んじられておられた。31年間、ありがとうございました、という思いです。
平成最後の桜「印象的」
谷垣さんは、仙洞御所の庭で育った実生苗を自宅の庭に植え、大切に育てている。「平成最後の今年の桜が印象的でした。桜も平成を惜しむがごとく、例年より長期間美しく咲いてくれて、感慨深かったです」と、両陛下との思い出に浸っていた。