「スケッチ予報」でおなじみの読売テレビ気象キャスター、蓬莱大介さん(37)の講演会がこのほど、兵庫県丹波篠山市で行われた。演題は「災害発生時の自助・共助の役割と必要性」。蓬莱さんは、近年頻発している異常気象や、天気予報の警報の意味など難しいテーマを、ユーモラスな語り口でクイズを交えるなどしてわかりやすく解説。「近年の傾向として、災害は『忘れたころ』にやってくるではなく、『忘れる前』にやってくる。『まさか自分が』ではなくて、『もしかしたら自分が』と考えて」と呼びかけ、「地域の防災力」を高めておくことの必要性を訴えた。要旨をまとめた。
気象が極端化 北海道で39・5度
異常気象とは、ある場所、ある時期において30年に1回以下で発生する現象のこと。昔からたまにある極端な現象だったのに、ここ10年の気象は、その頻度が多く、雨量と高温傾向は観測史上1位となっている。
昨年12月4日、冬だというのに大阪で24・5度を記録し、先月26日には北海道・佐呂間町で、5月としては全国観測史上最高気温の39・5度を記録するなど、135年間の統計開始以来の記録を更新している。
気象が極端化している。原因は、都市化によるヒートアイランド現象と、温室効果ガスの二酸化炭素の排出量増加による地球温暖化だ。この100年間で世界の年平均気温は0・73度上昇している。地球の歴史上、短期間でありえないほどの上昇幅だ。
気温が高いため、海からの水蒸気量が増えていることが大雨につながっている。昨夏は「平成30年7月豪雨」に襲われ、平成過去最悪の豪雨被害が発生した。丹波篠山市の後川では、総雨量が506・5ミリを記録。梅雨時期の2カ月分の雨がわずか3、4日で降ったことになる。広島・熊野町や岡山・倉敷市では甚大な被害が出た。
土砂災害や河川の増水は、じわじわくるのではなく、100を災害発生とすると、0から一気に100となる。発生するまでは日常の範囲内だが発生してからでは遅い。
今夏は平年並みか 50ミリ降雨1・5倍
今年の丹波地域の夏は、南からの湿った空気が入り込みやすい状態にあるので、6月下旬から7月中旬にかけて大雨のリスクがある。梅雨明け後は、去年ほどの猛暑とはならない。平年並みと予想している。
天気予報の「午前中の降水確率は40%です」は、過去に同じような天気の時に、午前中100回中40回、雨が降ったという意味。
市町村ごとに、「警報」や「注意報」の発表がある。「警報」は、人が死ぬかもしれない災害が起こる恐れがあるときに発表する。2013年から始まった「特別警報」は、警報の基準をはるかに上回り、50年に1度レベルの天気の時に発表され、「死なないでくださいね」というサバイバル状況で出す警報のこと。すでにどこかで自衛隊が出動するレベルの災害が発生している可能性もある。
1時間に50ミリの雨が降れば、排水処理能力を超え、町中は水であふれかえる。50ミリ以上の年間発生回数は30―40年前と比べると1・5倍に増加している(08―17年238回)。国土交通省も近年の雨の降り方を「局地化」「集中化」「激甚化」と表現し、過去の経験が当てはまらない、最悪の事態も想定する必要がある、としている。
情報いち早く確認 顔知った関係性を
情報をいち早く受け取って安全なところに避難することが重要。そこで行政が携帯電話などに配信している災害・避難情報や、防災マップを活用してほしい。危険区域や避難所の確認、防災グッズの常備など防災行動を面倒と考えてしまうかもしれないが、自分のためではなく、愛する家族や身内を守るためと考えてほしい。
大災害が発生すると、消防や警察、行政も被災しているので、救助・救援がすぐには期待できない。だからこそ地域の防災力を高めておく必要がある。
防災について知識と技術を持った地域のリーダーとして活躍できる「防災士」の資格を取ることも有効。なにより、日頃からあいさつを交わし、地域行事に参加するなどコミュニケーションを通じて、顔の知った関係性を築いておくことだ。
丹波篠山市は、自然の恵みがたくさんある素晴らしい地域。しかし自然との距離が近い分、自然の脅威にもさらされやすい。「念のために」をキーワードに、危なくなりそうなときには自然に謙虚に、無理しないことがこの場所での生き方だと思う。