「命捨てずブランドに」 地域おこし協力隊員、シカ肉処理業で起業 年間400頭の処理目指す

2019.07.01
ニュース丹波篠山市地域

最新設備を備えた食肉処理施設と新田さん=2019年6月12日午前11時12分、兵庫県丹波篠山市大上で

兵庫県丹波篠山市の地域おこし協力隊員の新田哲也さん(35)=神戸市出身、同市大上=が、自宅横にシカなどの食肉処理施設を構え、起業した。最新の設備をそろえており、年間400頭の処理が目標。猟師から買い取ったシカなどを精肉にしたり、ソーセージなどに加工して販売しているほか、今後は皮や骨の有効活用にも取り組むという。「大切な命を捨てることなく使って丹波篠山ブランドの一つとして売り出していき、猟師のみなさんをはじめ、地域の人たちに喜んでもらえる施設にしたい」と意気込んでいる。

 

最新設備導入、産官学連携も

屋号は、「狩り」と新田さんが愛するカレーから、「カーリマン」にした。

施設は約50平方メートル。入り口の扉前まで猟師らにトラックでシカなどを持ち込んでもらい、クレーンで吊り上げて施設内へ搬入。大型の冷蔵庫で10日ほど低温熟成した後、解体して処理する。

施設内にはほかに、銃弾が残っていないか確認するための金属探知機や真空パックにする機械のほか、肉の重さや誰が獲ったものかまでの情報をまとめて、「QRコード」で表示できる機器など最新設備を導入。農水省の「国産ジビエ認証制度」や、食品の衛生管理手順を「見える化」する国際基準で、近く日本でも義務化される「HACCP(ハサップ)」への認証も目指す。

肉は部位ごとに精肉として販売するほか、ソーセージやサラミ、ハムなどにして販売。添加物などを使わないオーガニック製品で、将来は都市部の百貨店などでも販売し、丹波篠山のジビエの味を市外にも売り込む。

また、行政や大学などとの「産官学連携」にも取り組む。このほど、さっそく神戸大学の黒田慶子教授と一般社団法人「ヤンマー資源循環支援機構」の共同事業の一環で、同大学医学部の学生らが訪れ、新田さんの指導でシカの解体を体験。「スポーツ医学」への活用を目的に、筋肉がどのようについているかや、神経がどう通っているかなど、解剖研修の場としても使用された。

 

元ゼネコン社員、ジビエの味に感動

新田さんは、一度はゼネコンに就職したものの、もともと抱いていた「カレー屋」になりたいという夢をかなえるために退職。その後、知り合いの猟師からもらったイノシシの肉の味に感動し、自身も猟師になった。

京都府南丹市美山町で自給自足をテーマにした宿泊施設に勤務したり、大阪の有名カレー店で修業する中、2017年から協力隊員に就任。畑地区を拠点に活動し、市の猟友会にも所属するなどしてさまざまな獣害対策に取り組んできた。

当初から処理施設の建設を目標にしており、国や県、市などの行政のほか、地域の人たちの支えで、ついに念願を果たした。

新田さんは、「たくさんの人の支援、応援があって施設が完成した。何よりは妻の叱咤激励です」と言い、「いろんな人とコラボレーションして、ジビエを使ったさまざまな事業に取り組みたい。ソーセージやハムなどで、”シカのお歳暮”も作れたら。また、シカ肉は低脂肪高たんぱくなので、アスリートの人にも知ってもらいたい」とほほ笑んでいる。

ソーセージは96グラム入りのミニサイズと120グラム入りのロングサイズをともに500円(税別)で販売している。

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