世界遺産で国宝の清水寺本堂(京都府)で50年ぶりに行われている檜皮(ひわだ)屋根の葺き替え工事に、兵庫県丹波市の20歳代の若手職人4人が従事している。一昨年の2月から工事は始まり、来月の7月に終了予定。そのあと棟瓦積みなどの工事があり、東京五輪までには改修工事が終わるという。4人は、「どの仕事でもそうですが、工事現場の足場が外れる日が楽しみ」と話している。
ヒノキの樹皮「檜皮」を採取する原皮師(もとかわし)の大野隼也さん(28)や、屋根にのぼって葺き替えをしている竹森暢哉さん(25)、槇原孝宜さん(24)、廣内翔さん(23)の4人。竹森さんは同市山南町の友井社寺、槇原さんと廣内さんは同町の村上社寺工芸社に勤めている。両社は、檜皮葺やこけら葺、茅葺などの伝統的な工法を用いて植物性屋根を施工している事業所。
大野さんは、同町上滝の大野檜皮工業に勤務。曾祖父、祖父、父親を継ぎ、大学卒業後、原皮師の道を選んだ。祖父や父親の仕事を子ども時代から見てきた大野さん。「大きくなって、家業の社会的意義を再認識しました」という。
父親の浩二さんと一緒に、京都丹波を含む丹波地方で檜皮を採取。清水寺の屋根で用いる檜皮は、長さ96センチ、厚み2ミリと、一般的なサイズよりも大きく、採取した檜皮をそのサイズにこしらえた。「自分たちのむいた檜皮が、50年、60年と、清水寺本堂を守るのかと思うと、感慨深い」と話す。
竹森さん、槇原さん、廣内さんは、もともと建築関係の仕事を志望。檜皮葺きの仕事を知り、興味を持ち、高校卒業後、それぞれの事業所に入社した。
屋根の葺き替えは京都市内の事業所が元請けになり、友井社寺、村上社寺工芸社を含め8社に仕事の依頼があった。現場では棟梁のもと、平均年齢30歳ほどの職人が1日平均7、8人ほどで共同作業をしている。
槇原さんは昨年夏に清水寺での仕事を終え、廣内さんは今年4月から従事しているが、清水寺での仕事に3人とも「ともかく、でかい」と口をそろえる。本堂屋根の表面積は約2050平方メートルで、約156トンの檜皮を使う。「いつ仕事が終わるのかと思うほど、でかい」と竹森さん。
3人は、「ほかの事業所の職人と一緒に仕事をするので、いい勉強になっている」と言い、「50年に一回の葺き替え。タイミングよく立ち会えたことは幸運だと思う」と話している。