国蝶「オオムラサキ」が多く舞う里山の姿を取り戻そうと、兵庫県丹波市柏原町の丹波の森公苑でこのほど、10回目となる放蝶会が開かれた。625人の参加申し込みがあり、遠くは名古屋市からの参加があった。オオムラサキの生態を学ぶ講演があったほか、飼育に取り組む小学生の発表もあった。最後はオオムラサキの成虫を放し、大空に向け力強く羽ばたく姿を見守った。
オオムラサキは準絶滅危惧種。同公苑は2007年から、施設内に専用ケージを設置して飼育し、09年から放蝶している。2、3年前より同公苑外での繁殖も確認されているという。
放蝶会を前に、京都大学名誉教授の西田律夫さんが「みんなで考えよう―オオムラサキの7つの不思議」と題して講演。オオムラサキの生態について解説し、「卵は、拡大観察するとブドウやスイカに似ている」「幼虫の顔は1匹ずつ違う」などと説明した。
このあと、校内でオオムラサキを飼育する同県丹波篠山市の篠山小学校3年生22人が発表。飼育の様子を語ったほか、生態に関するクイズも出題した。「9匹が成虫になって篠山の空に飛んでいきました」と喜びを発表し、「無事にチョウになったオオムラサキには、卵をたくさん産んでほしいです」と述べた。
放蝶会では、1家族に1匹ずつ、虫かごに入れた成虫が手渡され、計178匹の成虫が放たれた。すぐに大空へ飛び立つ成虫もいれば、しばらく参加者の腕にとまってから羽ばたくものもおり、参加者らは美しい姿を写真に収めていた。
来賓で訪れた京都大学名誉教授で、同公苑の名誉公苑長・河合雅雄さん(95)=同県丹波篠山市=は、「オオムラサキが、もっともっと増えてほしい」とにっこり。参加した男児は、「去年、放蝶した成虫はメスだったけど、今年はオスだった。たくさんオオムラサキが増えてほしい」と話していた。