夏休みが近づき、今年の自由研究のテーマを何にしようか考えている小学生の家庭も多いのではないだろうか。身近に転がっている「石ころ」を調べてみることをおすすめしたい。石ころには実は、その1つ1つの誕生に“地球のドラマ”がつまっている。
兵庫県三田市にある県立人と自然の博物館名誉研究員で、“石ころ博士”の古谷裕さんと一緒に、河原へ石ころ拾いに出かけた。場所は、兵庫県最大の河川、加古川の上流にあたる丹波市氷上町の佐治川。
河原にある石ころの種類と形は、川によって異なり、また同じ川でも上流、中流、下流という場所によって変わる。
「佐治川で一番多い石はこれ」と教えてもらったのは、「凝灰岩」。7000万年くらい前の恐竜がすんでいた時代に、火山の噴火で飛び散った火山灰が固まってできたそうだ。現在の兵庫県にはない活火山が、大昔にはあった証拠だ。丹波地域には、火山からできた石が多いという。
石ころは、大きく分けて3種類ある。マグマが固まった「火成岩」、海底や湖底、沼地などに運ばれた泥、砂、岩片などが堆積して固まった「堆積岩」、これらの石がもととは違った鉱物をもった岩石に生まれ変わった「変成岩」だ。
火成岩には、マグマが地下深くでゆっくりと冷えて固まった「深成岩」と、マグマが地表近くで急激に冷えて固まった「火山岩」がある。「凝灰岩」は、火山由来ではあるが、灰が固まったものなので、前出の「堆積岩」に分類される。
「鉄よりかたい」と、古谷さんから手渡された石の名前は「チャート」。何億年も前、太平洋の前身、パンパラッサ海で生まれたプランクトン(放散虫)の死体が降り積もってできた石だ。プレートの上に乗ってゆっくりと陸地の方に運ばれてくる間に石になった。
また、佐治川河原では見られなかったが、山の方には、どろが固まってできた「泥岩」があり、丹波地域の泥岩の地層(篠山層群)から恐竜の化石が見つかっている。
古谷さんは、「どんな石ころでも、“地球のドラマ”の中のできごとがあって生まれてきた。1つ1つの石ころがその情報をもちながら、ひっそりと転がっているところが魅力的」と石ころにハマっている。「石ころにはなんの値打ちもないように見えるが、過去の地球や過去の生き物との出会いと考えれば、かけがえのない宝物となる。身の回りにふつうにあるものも、よく調べてみるととてもおもしろいことを子どもたちに伝えたい」と話す。
「石を見分けるには、中の“つぶ”をよく見ること」と古谷さん。石をきれいに洗って濡らすと、粒が見えやすくなるそうだ。ルーペや虫めがねで、石の中の粒の形や大きさ、並び方、すき間がどうやってつながっているかを観察すると、種類が分かるようになるそうだ。夏休みの自由研究に「石の標本づくり」もいいかもしれない。