兵庫県丹波市柏原町の柏原支所庁舎をホテル化する議論が大きな転換点を迎えた。同市議会の臨時会が18日にあり、同支所庁舎をホテル化する「市立旧柏原町役場庁舎条例案」を賛成9、反対10で否決。同支所庁舎の活用は白紙になった。10日の同議案特別委員会は賛成多数で可決していた。否決を受け、谷口進一市長は丹波新聞社の取材に、「否決は残念。ホテル化をあきらめた訳ではないが、慎重に考える」と述べた。
昭和10年に建設された木造2階建て。現在、同市柏原支所庁舎として使用されているが、観光拠点化する方針を市が決定し、2017年12月議会で関連予算を可決した。しかし、18年1月に市長が一部ホテル化に舵を切り、同2月から実現に向けて取り組んできた。
当初計画は、公設民営で支所庁舎の1階は観光拠点にし、2階に2室を設けるものだった。市が支所近くの武家屋敷「田原邸」を購入し、田原邸2室、支所2室分を市が民間に貸し、ほかに民間が3室を整備し計7室で運営、民間がこれとは別にレストランを整備するとしていた。議会でのやり取りで、庁舎1・2階に客室5室を整備する、「田原邸」は購入しないなどと計画が変わっていった。2021年3月のホテル開業をめざしていた。
賛成「市活性の起爆剤」、反対「リスク管理不十分」
臨時会では、「原案通り可決する」との特別委員会委員長報告に、反対5人、賛成4人の各氏が討論に立った。
反対討論した5人のうち4人は特別委の前々日に、市が公費を投じることなく古民家を活用して農泊に取り組んでいる岐阜県美濃市を視察。4人はホテル化の意義は認めるものの、民間主導で行うべきとの考えを示した。
特別委で賛成し、本会議で反対した2議員は、市が投じるとしている公費(約1億9000万円)を減額し、「再提案を」と求めた。
反対した議員は、「リスク管理が不十分。市の説明は、そのつど変わり、白紙で賛成して下さいと言われているよう」「民間が投資してでも進出したいと思うまちをつくることが大切なのにホテルをつくることが目的化している」「再三の事業計画見直し、度重なる変更は行き当たりばったりで、職員や市民の信頼を失っている」などと理由を述べた。
賛成派は「当初計画より、市の財政負担が少なくなっている。市の施設の維持管理について、設計、施工、管理を一括発注するDBO方式はコストカットに有効」「市活性化の起爆剤になる。観光拠点機能を発揮し、成功事例となり、新たな展開ができる」「今の計画が市の未来を開く最善の形。泊まる所がない宿泊の問題を解決し、観光が振興する。ぜひ進めて」「柏原を始まりに、市内で交流人口が少しでも増え、(人口の)社会増が望まれる。この政策を呼び水に」などと賛意を述べた。
谷口市長は、取材に「単なる観光拠点では魅力がなく、役場に泊まれるのは他にない魅力。やり切りたいから計画を変更してきた」と思いを語り、今後の庁舎活用策は「懇話会などをつくることを考え、意見を聞きたい。焦らず、丁寧にやりたい」と述べた。