多くの小学校で子どもたちが待ちに待った夏休みがスタートした。子どもたちの楽しみの一つが、小学校のプールで開かれる「地区水泳」だ。昨年、記録的な猛暑の直撃を受け、地区水泳を取りやめるなど混乱が起きたため、今年は開催時間を涼しい午前に変更するなどの暑さ対策をして臨む学校も。中には地区水泳自体を取りやめる学校や、暑さだけでなく、監視員として参加する保護者の負担軽減を掲げ、期間を短縮するといったケースもあるなど、例年とは違った形が出始めている。兵庫県の2市を舞台に、地区水泳を巡る動きを追った。
兵庫県丹波市、丹波篠山市での地区水泳は各校のPTAが行っているもの。
昨年は西日本豪雨後、太平洋高気圧に覆われて厳しい暑さとなり、熱中症から子どもたちを守るため、各校では地区水泳を取りやめたり、期間の短縮や時間の変更、スポーツ飲料の解禁など対策に追われた。
36校中15校が午前に変更
そんな昨年の状況を受け、今年はさまざまな対策が講じられている。
本紙の取材によると、同地域の全36小学校中、暑さ対策として15校が実施時間を例年の午後から午前に変更した。また、もともと午前だったり、昨年から午前にしている学校も数校ある。
そもそもこれまで午後からの開催が多かったのは、「涼しい午前中に勉強して、午後は水泳や遊びに」という流れがあったためで、午前中に変更した学校は、「午前中に始まる水泳へ出掛ける前に、『1時間でも学習しよう』というようにできれば。また、午後からであっても、今は各家庭にエアコンがあり、生活や学習に支障はないと考える」と話す。
ある小学校では、登下校中の暑さに対応するため、隣接する認定こども園のスクールバスを地区水泳で使用できるよう調整している。
別の学校では、暑さ対策としてはミストシャワーを用意したり、日陰を作るためのテントを準備するなど、子どもたちの安全確保に奔走する。
このほか、環境省による、いわゆる「暑さ指数」が「31を超えた時は中止する」などのルール化を決めた学校も多い。対応した学校は、「指数31」を中止の目安にしつつ、「状況を見てPTAとも協議しながら中止か否かを決めていきたい」とする。
監視員務める保護者も負担?
また、暑さ対策のため、地区水泳自体を取りやめた学校が1校あるほか、校舎の改修工事のため、今年に限って取りやめた学校もある。
一方、ある学校のPTAは、例年、盆ごろまで行っていた地区水泳を今年初めて7月いっぱいのみにした。さらにこれまでは全児童を対象にしていたが、今年は事前申し込みを受け付け、参加する児童の保護者が監視員としてついていくことになった。
暑さ対策も含んでいるものの、主な理由はPTAの負担軽減。昨年の経験は、保護者にも意識の変容をもたらしている。
関係者からは、「楽しみや体力づくりなど意味のある活動。暑さに気を付けながら続けていきたい」「地区水泳は子どもの居場所でもある。なんとか続けさせてあげたいが、一方で昨年の暑さを考えるとびくびくしている」などという声が上がる。
ある保護者は、「暑さはもちろん怖いが、監視員の当番に当たると夫婦のどちらかが仕事を休まないといけないので、正直、取りやめになった学校がうらやましい」としつつ、「自分たちが監視に行けない日はほかの親が自分の子どもを見てくれていると思うと、お互い様ですね」と複雑な心境を打ち明けている。
昨年は7月14日から26日に全国100地点以上で猛暑日が続くなど、記録的な高温となった。丹波地域では丹波市柏原町の観測地点で7月17日に最高気温37・9度を観測。1978年の観測開始以来3番目の高温で、7月では過去最高を記録し、熱中症の疑いで緊急搬送される人も出た。
一方、今年は20日時点でこれまでの最高気温が17日の32・2度と低めで推移している。